The Chronicle of Broadway and me #847(Dear Evan Hansen) & The Chronicle of Broadway and me #869(Dear Evan Hansen[2])+『Dear Evan Hansen』(film)

2016年3月~4月@ニューヨーク(その3)/★2016年11月@ニューヨーク(その3)

 『Dear Evan Hansen』(4月3日@Tony Kiser Theatre/Second Stage Theatre)と『Dear Evan Hansen』(11月18日@Music Box Theatre)について、以下のような事情で2021年10月にアップしてあった記事へのリンク&補足説明と、その記事の内容を転載した2022年8月の追記です。
 

 11月26日に全国ロードショーが始まる映画版『Dear Evan Hansen』についての記事が、こちらにアップされました。
 中で舞台版についての感想も書いているので、読んでみてください。

<オフからの移行作。2016年春から初夏にかけてのセカンド・ステージでのオフ公演は、オビー賞を含め複数の賞を獲得している。
 今年のトニー賞の最有力候補と見る。>

 というのが、旧サイトに載せていたブロードウェイ版観劇当時の感想の書き出しです。
 予想通り2016/2017シーズンのトニー賞ミュージカル作品賞を受賞。以下、主要スタッフとキャストを挙げておきます。名前の後ろに★が付いているのはトニー賞受賞者です。

 楽曲ベンジ・パセック&ジャスティン・ポール★。脚本スティーヴン・レヴィンソン★。音楽監修・編曲アレックス・ラカモア★。
 演出マイケル・グリーフ。振付ダニー・メフォード。印象的なプロジェクション・デザインはピーター・ニグリーニ。

 出演は、エヴァン・ハンセン/ベン・プラット★、ハイディ・ハンセン/レイチェル・ベイ・ジョーンズ★、ゾーイ・マーフィ/ローラ・ドレイファス、コナー・マーフィ/マイク・ファイスト、シンシア・マーフィ/ジェニファー・ローラ・トンプソン、ラリー・マーフィ/ジョン・ドセット(オフ)→マイケル・パーク(オン)、ジャレッド/ウィル・ローランド、アラナ/クリストリン・ロイド。
 

[追記](2022年8月)

 2021年秋、映画版日本公開直前にMEN’S Precous WEBにアップした上掲リンク先の記事を以下に転載しておきます(<>内)。映画版の感想も込みです。

『Dear Evan Hansen』の主人公エヴァン・ハンセンは、ハイスクールの学生。社会不安障害(対人恐怖症)を抱え、母の勧めでカウンセリングを受けていて、治療の一環として「ディア・エヴァン・ハンセン」で始まる自分宛のメッセージをPCで書いている。セラピストに見せるはずの、そのプリントアウトを、やはり学校で孤立しているコナーという男子生徒に持ち去られるが、彼が自殺。ポケットから出てきたプリントアウトを見た彼の家族は、エヴァン・ハンセンを息子の親友だと思い込み……。という偶然と誤解から始まる、人間関係が苦手な人々の物語。
 これにSNSが絡んで話が大きくなるのが当時としては斬新で、あれこれあってエヴァン・ハンセンは、ある種のヒーローに祭り上げられる。
 無限に開かれたネットの世界と殻に閉じこもる個の世界の併存、という現代の苦い様相を描き出したところに“旬”な輝きがあった。フォーク/ロック的だが定型に収まらない楽曲も、そうした内容に呼応して、揺れ動く登場人物たちの感情を、時に性急に時に繊細に描き出す。

 楽曲作者(作曲・作詞)のベンジ・パセック&ジャスティン・ポールは共に1985年生まれ。日本でも翻訳上演されているオフの『Dogfight』、ブロードウェイの『A Christmas Story The Musical』と実績を重ねてきた上での『Dear Evan Hansen』のヒットだが、世界的には2016年暮れに全米公開された映画『La La Land』の作詞者として、さらに翌年暮れ公開の映画『The Greatest Showman』の楽曲作者として一気に注目度を上げた。

 ブロードウェイ開幕から5年。その間にトランプ政権が誕生して世界の混乱に拍車をかけたまま去っていき、SNS世界にも少なからぬ変化が起きた。それでも舞台版が古びることなく人気を博しているのは、ひとつには、観客の想像力に多くを委ねる舞台ミュージカルならではの普遍的な“寓話感”を秘めているからだと思う。それには、これも舞台ならではのSNS世界を反映した巧みなプロジェクションも一役買っているだろう。

 映画版は、そうした“寓話感”を孕んだ舞台版を2021年の映画的現実に落とし込むにあたり、物語の核となる家族ドラマの部分に重点を置き、そこを丁寧に描くことで新たな手触りを獲得している。ロバート・レッドフォード監督の1980年映画『Ordinary People』(邦題:普通の人々)に連なる感触。
 エヴァンと母、亡きコナーの妹と両親。辛うじて繋がっている2組の家族がコナーの家の居間に集う、表向き穏やかで実は緊迫した場面が、後に起こる大きな混乱以上に、ドラマの上でのクライマックスに見える。そこで複雑に絡まった情感が、終盤にエヴァンの母(ジュリアン・ムーア)の歌う名曲「So Big/So Small」で昇華されるのが個人的にはツボ。その他の楽曲も新たな設定の下、改めて心に響く。
 パセック&ポールは映画版のために新曲を2曲書き下ろしている。その内の1曲「The Anonymous Ones」は、劇中で歌うアマンドラ・ステンバーグとパセック&ポールの共作。
 舞台版をご覧になっていない方は、この映画でパセック&ポールの楽曲の魅力を十全に味わっていただきたい。間違いなく(現時点での)彼らの最高傑作は『Dear Evan Hansen』だから。
 脚本は舞台版と同じスティーヴン・レヴェンソン。主演も舞台版のオリジナル・キャスト、ベン・プラット。コナー役のコルトン・ライアンは舞台版でエヴァンやコナーのアンダースタディだった役者で、ブロードウェイ版『Girl From The North Country』のオリジナル・キャストでもあった。監督はスティーヴン・チョボスキー。>

The Chronicle of Broadway and me #847(Dear Evan Hansen) & The Chronicle of Broadway and me #869(Dear Evan Hansen[2])+『Dear Evan Hansen』(film)” への22件のフィードバック

コメントを残す