The Chronicle of Broadway and me #724(Pippin)

2013年3月@ニューヨーク(その7)

 『Pippin』(3月24日19:30@Music Box Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。1997年5月に観た『Candide』との関連で上げました。

<今回観た中で最も遅くに登場した作品で、観劇前日にプレヴューを開始したばかりだったのが、リヴァイヴァル版『Pippin』
 初演は1972年で、ロングランは4年と8か月。オンでのリヴァイヴァルは、それ以来となる。舞台版をヴィデオで観たことはあるものの、実際に舞台で観るのは、これが初めて。

 まず感じたのは、『Chicago』との類似。
 いずれも初演は演出・振付がボブ・フォッシーで、『Chicago』の初演開幕は『Pippin』がロングラン中の1975年。テイストが似ていても不思議はない。具体的には、幕開きの観客に向けてのナレーションとか、サーカス(『Pippin』)やヴォードヴィル(『Chicago』)の世界を外枠として借りているところとか、舞台の世界観とでもいうべき部分が似ている。おまけに、リヴァイヴァル版の振付家は、両作ともフォッシーの弟子筋。『Chicago』はもちろんアン・ラインキング。『Pippin』のチェット・ウォーカーは、ダンサーとしてフォッシー作品に出演してきた後、『Fosse』でラインキングと共に振付を手がけた人。どちらも振付がフォッシー流儀の再現だろうことを考えても、似ている要素は多い。
 で、比較しての結論は(と言っても、どちらもリヴァイヴァル版しか観ていないので、その比較だが)、『Pippin』は脚本が弱く、特に第2幕にそれが顕著になる。第1幕は、とにかく、特異な人物のエピソードが次々に登場、様々な手法を駆使して展開していくので、視覚的に(聴覚的にも)楽しく、一気に観てしまうが、一転シリアスになる第2幕は、脚本の弱さが露呈する。
 まあ、この第2幕の“祭の後”的な空気が1972年当時の“気分”だったのかもしれないが。
 そう言えば、『Pippin』の初演版は、開幕直後はチケットの売れ行きも鈍かったが、当時としては珍しいPVをTVで流す宣伝をして当たった、とフォッシーの追悼番組だかで言っていた覚えがある。イマイチな感触は当時からあったのかも。

 ちなみに、その初演版のPVで見事なフォッシー・ダンスを見せていたのは狂言回し役(“Leading player”と呼ばれている)のベン・ヴェリーンだが、今回その役を演じるのは、英米の『Sister Act』で名を馳せたパティーナ・ミラー。体の動きがシャープで、素晴らしい。
 他に、アンドレア・マーティン、テレンス・マン、シャーロット・ダンボワーズといった曲者たちが(特に第1幕を)盛り上げる。彼らの芸を観るためだけでもチケットを買う価値はある。ピピン役のマシュー・ジェイムズ・トーマスは『Spider-Man: Turn Off The Dark』の元祖スパイダー・マン(ただしWキャストで出演回数が少ない方)。>

 作曲・作詞スティーヴン・シュウォーツ(『Wicked』『Godspell』)。脚本ロジャー・O・ハーソン。
 演出ダイアン・ポーラス(『The Donkey Show』『Hair』『The Gershwins’ Porgy And Bess』)。振付は初演のチェット・ウォーカーが再び「フォッシー・スタイルに基づいて」手がけている。

 上に書いた以外に、『Dear Evan Hansen』でエヴァン・ハンセンの母親役を演じることになるレイチェル・ベイ・ジョーンズが主要キャストの1人(キャサリン役)として出演していた。

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