The Chronicle of Broadway and me #663(Godspell)

2011年10月@ニューヨーク(その4)

 『Godspell』(10月16日19:30@Circle In The Square)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

『Godspell』は10月13日にプレヴューを開始したばかりだった。
 この作品の初演は1971年。オフで5年間上演された後、1976年にオンに移って1年ちょっと続いている。ブロードウェイでのリヴァイヴァルは、その時以来。

 オンとはいえ、サークル・イン・ザ・スクエアは小ぢんまりした、しかも楕円形の舞台を客席が取り囲む形の劇場。なので気分はオフ。そして、そこで繰り広げられるのは、観客をも巻き込む即興劇のような集団劇。
 おそらく、そうした演出で初演時の空気を再現しようとしているのだろう(最初に全員で携帯電話を投げ捨てたりする現代性はあるが)。2008年にセントラル・パークの野外劇場で上演された(翌年ブロードウェイ入り)リヴァイヴァル版『Hair』がそう意図していたように。
 しかしながら、キリストと使徒との問答集のような内容は、どうにもまどろっこしくて、役者のエネルギーは感じるものの、イマイチ乗りきれない。
 いったい、この問答劇は、アメリカ人にとっては今でも有効なんですかね。観客が沸くのが、懐かしくて(あるいは伝説的作品を目の当たりにして)盛り上がっているのか、それとも心から感銘を受けてのことなののか、判断がつきかねた。

 ところで、青井陽治演出(翻訳・訳詞も)による翻訳版を2002年に観た時には、日本人が上演している意味が全くわからなかったものだが、昨年(2010年)の山本耕史演出版はどうだったんだろう。観ておけばよかったな。>

 この作品が最近まで(本国はもとより日本でも)頻繁に上演され続けているのは、元がオフならではの小規模な“即興劇”的舞台であり、それを前提にリヴァイヴァルさせるので、装置が簡素で費用がかからない、ってことが最大の理由なんじゃないだろうか。おまけに、若者たちによる“集団劇”なので、特別なスターがいなくても大丈夫。例えば、学生劇団でも充分やれる。一応「Day By Day」というヒット曲もあるし(オフ・ブロードウェイ・キャストによるシングルがビルボードで最高13位)。
 同時に、この作品に漂っているのは、初演時には斬新だったであろう1970年前後のカウンター・カルチャーの香り。その根幹をなす“即興劇”というスタイルが40年前後の時を経て、ある種の様式美と化し、逆に古臭さすら感じさせる結果になっている(本来、融通無碍であるべき“即興劇”が様式化するという逆転現象)。
 そんなこんなで、改めてブロードウェイの舞台に登場した“往年の名作”は、“往年の名作”以上には感じられなかった……ということか。
 トニー賞にノミネートされなかったこともあってか、翌年、同賞授賞式後の6月24日に幕を下ろしている。

 作曲スティーヴン・シュウォーツ。作詞は基本、旧約聖書マタイ伝からの引用で、一部シュワルツの書き下ろし。「Be My Side」のみシュワルツ参加前に書かれた曲で、作曲ペギー・ゴードン、作詞ジェイ・ハンバーガー。
 創案は初演の演出家でもあったジョン・マイケル・テベラック。脚本家のクレジットはなく、ストーリーはマタイ伝に依っている。
 このリヴァイヴァル版の演出はダニエル・ゴールドスタイン(『Walmartopia』)。振付は売れっ子(!)クリストファー・ガッテリ(『Newsies The Musical)。

 メインの出演者はキリスト役ハンター・パリッシュ、ユダ役ウォーレス・スミスだが、むしろ強調しておきたいのは、2018年の『Carousel』でトニー賞を獲ることになるリンゼイ・メンデズ(『Grease』『Everyday Rapture』)。加えて、『Be More Chill』のジョージ・サラザー、『Aladdin』『Allegiance』のテリー・レオンといった顔ぶれも。

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