The Chronicle of Broadway and me #786(Guilin/The Calico Buffalo/For Tonight/Somewhere With You)

2014年7月@ニューヨーク(その6)

 NYMF(ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル)参加作品13本を3分割して、その2。

 『Guilin』(7月11日16:00@Studio Theatre/Theatre Row)のタイトル「Guillin」は中国の内陸部に位置する「桂林」のこと。
 天安門事件の直後にアメリカに養子に出された中国人少女メイ・リーは、ハイスクールの卒業を前に、夜ごと、幼い頃に離れた故郷、桂林の夢を見るようになる。やがて彼女は夢の世界に入り込んでいき、養子に出された当時の中国の事情(天安門事件に象徴される政治的状況や一人っ子政策のこと等)を実の親から知らされると同時に、桂林の素晴らしさを再認識していく。
 というような話だったようだ(うろ覚え)。リーディング上演。

 作曲・作詞・脚本のルイス・スティーヴン・サントラは中国系というわけではなく、中国旅行の体験を元にドラマを創り上げたようだ。楽曲は、クラシカルな要素のある、力作と呼びたくなる作風。
 演出のピーター・グレガスは『Contact』『Jersey Boys』に出ていた人と同一人物だろうか。

 『The Calico Buffalo』(7月12日13:00@Studio Theatre/Theatre Row)は、タイトル通り、体に斑点のある“まだら”のバッファローの物語。バッファローの群れの女王が生んだ子供が“まだら”だったことから様々な混乱が生じ……と展開していく。
 元になったのが、作曲・作詞・脚本を手がけたE・J・ステイプルトンが描いた同名絵本。というわけで一応、子供向けだが、多様性やジェンダーの問題等が象徴的に描かれている。
 これもリーディング上演。

 E・J・ステイプルトンと作曲・作詞を共作しているのはピーター・ストップスキンスキー。題材に対して、音楽が、時に立派過ぎる印象(『The Lion King』をイメージして作ったのかも)。
 演出クレイグ・J・ジョージ。

 『For Tonight』(7月12日16:00@Studio Theatre/Theatre Row)の物語はウェールズの小さな村から始まる。
 病気で両親を一度に亡くした3兄弟は自活を余儀なくされる。村の中で生きていく長男と末妹。が、かつて彼らの家で暮らしたことのあるロマに憧れを抱いていた次男は、ギターを片手にリヴァプールに出ていく。そこで恋に落ち、2人で渡米を計画するが、故郷の妹の病を知り……。
 という話は、作曲・作詞・脚本のスペンサー・ウィリアムズの祖先に起こった1830年頃の実話を元にしているらしい。もっとも、設定は現代で、音楽もロック的だが。
 リーディング上演。

 共同で作曲・作詞・脚本を書いているのはシェネル・ウィリアムズ(おそらくスペンサーと夫婦)。脚本には、もう1人、ホイットニー・ローズの名前がある。
 演出ジョー・バーロス。

 主人公(次男)が恋に落ちる相手を演じたハンナ・エレス(『The Other Josh Cohen』)は、2011年リヴァイヴァル『Godspell』に途中参加してブロードウェイ・デビュー。この後、『Bright Star』に主要キャストとして出演することになる。

 『Somewhere With You』(7月13日12:00@Alice Griffin Jewel Box Theatre/Pershing Square Signature Center)は、カントリー・ミュージックのソングライター、J・T・ハーディングの楽曲(書き下ろし新曲も含む)による準“ジュークボックス・ミュージカル”。
 ちなみに、作品タイトルは、ケニー・チェズニーが歌ってヒットした2010年の同名曲から。

 イラク戦争を背景にしたアメリカ人の物語で、戦争で心に傷を負った帰還兵と、これから戦場へ行く恋人とを中心に、彼らを巻き込むマスコミの情宣活動等も交えながら、やや皮肉に描かれていく。

 脚本・演出ピーター・ジン。振付リカルド・ラスト。

 ラジオやTVで知られるジェイ・トーマスが特別出演扱いで出ていた。
 

 

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