The Chronicle of Broadway and me #765(The Other Josh Cohen/Arlington)

2014年2月~3月@ニューヨーク(その7)

 『The Other Josh Cohen』(2月27日13:30@Paper Mill Playhouse)は、2010年のNYMF(ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル)参加作品『V-Day』を改題したもの。とことんツイてない男ジョシュ・コーエンの物語。
 ニューヨークのアパートメントの部屋からニール・ダイアモンドのCD以外の全てを盗まれた、人のいいジョシュ・コーエン。彼には、お金もなければ愛もない。そんなところに、どうやら親戚筋らしい女性から高額の小切手が届く。はたして幸運の女神なのか?

 楽曲作者にして脚本家でもあるデイヴィッド・ロスマー&スティーヴ・ロースンのコンビがメインの役者として舞台にも立つ、というスタイル。同じ赤地に黒のチェックのネルシャツを着た2人の内、ギターを弾きながら歌うロスマーは未来のジョシュで、過去のジョシュであるロースンと共に1年前に起こった出来事を語っていく、というのが、まず面白い。
 加えて、その他の5人の役者が、それぞれ様々な役(ニール・ダイヤモンドも登場!)を演じると同時に、楽器をとっ替えひっ替えしながらバンド演奏もするのが楽しさを増す。

 演出は『V-Day』の時と同じくテッド・スパーリング。振付アンドリュー・パレルモ。パレルモの役者時代の卓越したダンス映像を見つけたのでこちらに貼っておきます。

 4年9か月後にオフで三度まみえることになるが、その時は過去に観たことをすっかり忘れていた(笑)。
 


 『Arlington』(2月28日20:00@Vineyard Theatre)のタイトルは、俗にアーリントン墓地と呼ばれるヴァージニア州アーリントンにある戦没者慰霊施設を意味する。
 居心地のよさそうなお金のかかったリヴィングルームにいる女性サラ・ジェインのモノローグの歌で話は進む。中盤を過ぎると、背後の半透明の布の向こうにいる伴奏ピアニストのセリフや歌声が、サラの夫や父親として彼女の回想の中に登場してくる。
 そうやって描かれるのは、彼女の日常の向こうに潜む、中東に出征している夫や軍隊生活を懐かしむ父親から連想する戦争への違和感。その違和感がじわじわと彼女の精神に(そして我々の世界に)侵食してくる。そんな印象をもたらす。

 作曲ポリー・ペン、作詞(・脚本)ヴィクター・ロダートによる楽曲は多分にオペラ的。サラ・ジェインを演じるアレグザンドラ・シルバーは、それに応じたソプラノによる緊迫感に満ちた歌唱を聴かせる。
 テノールで歌いもするピアニストはベン・モス。

 演出キャロリン・キャンター。