The Chronicle of Broadway and me #828(Into The Sun/Tonya & Nancy/The Gold/Real Man)

2015年7月@ニューヨーク(その6)

 NYMF(ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル)参加作品13本を3分割して簡単な紹介を(その2)。

 『Into The Sun』(7月15日16:00@Studio Theatre/Theatre Row)はリーディング上演。
 中心になるのは第一次大戦で従軍したイギリスの若い兵士3人。近代戦でもとりわけ悲惨だったと言われる”塹壕”に籠もることになる若者たちと、その家族、恋人の物語。
 戦争詩人と呼ばれる、同大戦時の体験を詩に綴った一連の人々の生涯とその詩を元に作った、と、作者(作曲・作詞・脚本)であるマイケル・ガブサーとパオロ・プランドーニがプログラムに書いている。
 演出ジョー・バーロス(『For Tonight』)。

 出演者にローラ・リー・ゲイヤー(『Follies』『Doctor Zhivago』)がいた。
 


 『Tonya & Nancy: The Rock Opera』(7月16日13:00@PTC Performance Space)は、この年のNYMFで最も印象に残った作品。
 トーニャはトーニャ・ハーディング。となると当然ナンシーはナンシー・ケリガン。1994年1月6日、リレハンメル・オリンピック選考会である全米選手権の会場で起こったナンシー・ケリガン襲撃事件を軸に、陽のあたる場所を歩くナンシーと対照的に、母親の虐待の下で育ったトーニャの捻じれた人生を、驚いたことに、時に笑いを交えながら描いていく。フィギュア・スケート界の話だが、それがアメリカ社会の闇を暴いているように見えるあたりが怖い。
 作曲・補作詞マイケル・テオリ、作詞・創案・脚本エリザベス・シアール。
 演出デイヴィッド・アルパート。振付マーク・キメルマン。

 ドラマの鍵を握るトーニャの母親役、兼(!)ナンシーの母親役リズ・マッカートニー(『Dance Of The Vampires』『Taboo』『Bingo』『Annie』)。トーニャ役トレイシー・マックドウェルは『Rent』『Motown The Musical』に、ナンシー役ジェンナ・リー・グリーンは『Wicked』に出演してきている。
 


 『The Gold』(7月16日16:00@Studio Theatre/Theatre Row)もオリンピック絡みの話。ただしフィクション。
 1936年のベルリン・オリンピック。主人公はボクシングで出場するユダヤ系ドイツ人という設定。ナチ政権下でドイツ国民として金メダルを目指すことの葛藤と、その後の彼と彼の家族の運命を描く。
 作曲・作詞・脚本フィリップ・ヨソウィッツ。彼が書いた同名の大著があるらしく、その物語はフィリップの父ジョーゼフのチェコスロヴァキアからの逃避行を下敷きにしているという。このミュージカル版で描かれるのはそこから抜粋されたごく一部で、それが物足りない、という批評を見かけた。共同脚本アンドレア・レプシオ。
 演出を手がけたのはフィリップの娘ローラ・ヨソウィッツ。
 この年はリーディング上演だったが、翌年のNYMFで、演出をスピロ・ヴェロードスに替えて通常上演されたようだ。

 主人公を演じたのはジョシュ・デイヴィス(『Beautiful: The Carole King Musical』)。
 


 『Real Man, A Musical For Guys And The Women Who Put Up With Them』(7月17日12:00@Laurie Beechman Theatre)は、サブタイトルが暗示するように、”男らしさ”にこだわる男たちの実態を、それにうんざりしている女性たちの心情と共に描き出そうとするコメディ・ミュージカル。
 出演者は男性3人だけで、パペット等を駆使しながら、昔ながらのヴォードヴィル的な芸によるスケッチを次々に披露していく。楽曲もオーソドックスだが、楽しく観た。
 作曲・作詞・脚本ポール・ルイス&ニック・サンタ・マリア。この2人にスティーヴン・G・アンソニーを加えた3人が舞台に登場する。
 演出デイヴィッド・アリスコ。

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