The Chronicle of Broadway and me #814(Doctor Zhivago)

2015年4月@ニューヨーク(その4)

 『Doctor Zhivago』(4月4日20:00@Broadway Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

『Doctor Zhivago』の演出家デス・マカナフは大がかりな装置が大好き。1993年の『The Who’s Tommy』ではハードなサウンドと相まって、それが功を奏したが、続く1995年の『How To Succeed In Business Without Really Trying』の時には、すでに内容と齟齬があるように感じたものだ。
 今回は、巨大な鉄製(に見える)の可動式のシーソーのような装置が出てきて、列車その他に化ける。が、どうにも効果のほどが感じられない。おまけに、観た回は途中で故障して舞台が止まってしまった。
 てなことは、ま、些末か。

 同名映画(邦題:ドクトル・ジバゴ)の舞台ミュージカル化(その元はボリス・パステルナークの同名小説)。
 ロシア革命を背景に、民衆に心を寄せる貴族階級の医師ジヴァゴとその妻、革命に身を投じる女性ララと彼女を愛する革命家、という4人の愛憎が描かれる。その構造からして、どこか『Les Miserables』を思わせるが、あちらほど筋に起伏(例えば、子供の頃悪玉だったエポニーヌが成長して善玉に変わるというような)がなく、後半単調になる。

 楽曲も、やはり『Les Miserables』的な歌い上げ系だが、結果的には、第1幕中盤で戦場の看護士たちによって穏やかに歌われる映画版の主題歌「Lara’s Theme」(ララのテーマ)のヴォーカル・ヴァージョン「Somewhere My Love」(作曲モーリス・ジャール)が一番心に残るのは、皮肉と言えば皮肉。
 作曲のルーシー・サイモンはカーリー・サイモンの姉で、サイモン・シスターズとして活動後、自身のアルバムも発表しているシンガー・ソングライター。劇場では1991年の『The Secret Garden』の作曲をしている。
 作詞を手がけた2人の内、マイケル・コリーは、オフで話題を呼び2006年にブロードウェイに移った『Grey Gardens』の作詞家。もう1人のエイミー・パワーズも劇場周辺で活躍する人で、ブロードウェイでは『Sunset Boulevard』に“作詞に貢献した”人としてクレジットされている。

 ちなみに、土曜の夜だったにもかかわらず観た回はジヴァゴ役が代役だった。>

 ルーシー・サイモンは今年(2022年)の10月に亡くなっている。ポピュラー音楽世界から舞台音楽の世界に参入して実績を作った女性作曲家の先駆的存在だった。

 脚本マイケル・ウェラー。振付ケリー・デヴァイン。

 観られなかったジヴァゴ役者は、これがブロードウェイ・デビューだったタム・ムトゥ(後に『Moulin Rouge: The Musical』)。その代役は、多くのブロードウェイ作品でアンダースタディを務めているブラッドリー・ディーン。
 ララ役はケリ・バレット(『Baby It’s You!』)。
 他に、トム・ヒューイット(『The Rocky Horror Show』『Dracula, The Musical』『Jesus Christ Superstar』)、ポール・アレグザンダー・ノーラン(『Jesus Christ Superstar』)、ローラ・リー・ゲイヤー(『Follies』)。

 3月27日プレヴュー開始、4月21日正式オープン、5月10日クローズと短命に終わっている。

 

The Chronicle of Broadway and me #814(Doctor Zhivago)” への16件のフィードバック

コメントを残す