The Chronicle of Broadway and me #1008(Slave Play)

2019年10月@ニューヨーク(その8)

 『Slave Play』(10月23日14:00@Golden Theatre)は、戯曲家ジェレミー・O・ハリスのブロードウェイ・デビュー作。前年11月にオフのニューヨーク・シアター・ワークショップで上演された後のブロードウェイ移行だった。
 翌年、トニー賞で12部門にノミネートされ(音楽賞を含む)、非ミュージカル作品としての最多記録を更新することになるが、わざわざ観に行ったからには、この秋の時点ですでに何かしらの話題になっていたのだろう。例によって思い出せないが(笑)。

 そんな風に曖昧な動機で出かけたが、観て、なるほど!と話題になるわけがわかった気がした。

 ※以下、重要なネタバレがあります。今後リヴァイヴァルなり別ヴァージョンなりで観ようと思っている方は読まない方がいいかと。

 第1幕には、まず、3組のカップルが別々に登場する。服装や人間関係から推すに、舞台設定はどうやら南北戦争あたりのアメリカ。
 3組のカップルは、いずれもが外見上はホワイトとブラック。これまた外見上のジェンダーとの組み合わせで言うと、ホワイトの男性とブラックの女性、ホワイトの女性とブラックの男性、ブラックの男性とホワイトの男性。加えて、いずれも、先に挙げた方の人物が優位に立つ力関係で一方がもう一方に隷属しているように見える。そして、それぞれが多分にアブノーマルな気配のある性行為に移っていく。
 3組の描写が順にひと通り終わったところで、再び、3組のその後の様子に視点が移るが、何かギクシャクしている。
 そこに現代的服装のホワイトの女性とブラックの女性が登場して、カップルたちに別室に移るように事務的に指示する。
 3組のラヴ・アフェアは、実は、異人種間カップルの関係改善を目的とした実験的試みだったのだ。
 そして、第2幕では、試みに参加した全員が自分の悩みを告白し合うセラピーの様子が描かれ、屈折した歴史を経た様々な形の人種間の感情の捻じれが、登場人物たちの個人的体験として次々に立ち現れてくる。

 面白い狙いと構造。十全に理解したとは言い難いが、野心作であり力作であることは異邦人にも、よくわかった。

 演出ロバート・オハラ。音楽リンゼイ・ジョーンズ。

 2022年の『Paradise Square』でトニー賞を獲ることになるホアキーナ・カルカンゴ(『Holler If Ya Hear Me』『The Color Purple』)が、ポール・アレグザンダー・ノーラン(『Jesus Christ Superstar』『Doctor Zhivago』『Daddy Long Legs』『Bright Star』『Escape To Margaritaville』)と共に、最初のカップル役で出演していた。

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