The Chronicle of Broadway and me #843(Daddy Long Legs)

2015年11月@ニューヨーク(その8)

 『Daddy Long Legs』(11月23日19:30@Davenport Theatre)は、同じジョン・ケアードの脚本・演出による翻訳公演を2012年9月7日にシアタークリエで観ていた。
 まずは、そちらの観劇当時の感想から(<>内)。

<出演者2人のミュージカル。
 ジョン・ケアードの、書簡体ミュージカルと呼びたくなる、手紙の特性を生かした脚本、及び、精緻を極めた演出によって見事な仕上がりとなっていた。
 ポール・ゴードンの楽曲も無理がなく(詞とケアードの脚本との境界線のなさ!)、かつ、魅力もあった。今井麻緒子の翻訳(詞も)も、かなり自然。
 デイヴィッド・ファーリーの装置(衣装も)が、これまた素晴らしい。

 出演の井上芳雄、坂本真綾は、微妙なタイミングが命の演技を丁寧にこなして立派。
 来年初めの再演は、すでに完売のようだ。>

 その日本翻訳公演以前にも歴史があり、2009年10月にカリフォルニアのヴェンチュラでワールド・プレミア公演、次いで、シリコン・ヴァレー、シンシナティで上演。日本翻訳公演と同年の2012年の10月にはウェスト・エンド版が作られている。
 それから3年後のオフ・ブロードウェイ公演なわけだが、正直、その道のりを経たにもかかわらず、この小さな劇場で? と思った。
 ダヴェンポート劇場。前年の途中までは45丁目劇場という名だったはずだが、1階のメインの劇場は149席しかない小ささ。ここで一番多く観たのはNYMFの諸作で、そう言ってはナンだが、それなりの完成度の作品はここではやらない印象を持っていた。
 内容よりも、そのことに驚いたのを覚えている。
 不思議だったが、プログラムのクレジットを見てわかった。劇場の借り主であるケン・ダヴェンポートがプロデューサーだったのだ。この公演に向けてのリーディングは前年から行なわれていたらしいから、そもそもダヴェンポートは、この作品を上演するために劇場の権利を取得したのかもしれない。

 で、肝心の仕上がりはと言うと、日本語上演版の時ほどの感銘は受けなかった。おそらく、演出がわかった上で観たせいで、二人芝居ならではの意外性に対する驚きが弱まったのだろうと思う。

 このオフ公演を含め上記いずれの公演も、主演のジュディ(ジルーシャ・アボット)役は、『Parade』『Little Women』のオリジナル・キャストだったミーガン・マクギニス(マッギニスという発音が近いと思うが)。
 あしながおじさんことジャーヴィス役は、オフ・ブロードウェイ・キャスト盤で歌っているポール・アレグザンダー・ノーランがすでに降りていて、観た時はアダム・ハルピン。マクギニスの実生活での連れ合いに替わっていた。

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