The Chronicle of Broadway and me #897(Woody Sez/Sweeney Todd[2])

2017年7月~8月@ニューヨーク(その5)

 『Woody Sez』(7月30日15:00@Irish Repartory Theatre)には、The Life & Music Of Woody Guthrieというサブタイトルが付いている。sez は says の俗語表現だから、タイトルのニュアンスは、ウッディ・ガスリーいわく、といった感じだろう。
 ウッディ・ガスリーは「フォーク界の最も重要なシンガー・ソングライター」で、「30年代から50年代にかけてアメリカ各地を放浪し、土地を失った農民や季節労働者など、社会を底辺から支える人たちに寄り添って、数多くの曲を残し」ている(「」内は北中正和著「ボブ・ディラン」新潮新書より引用)。

 ミュージカルの基本的なスタイルとしては”ソング・サイクル”と呼ばれるもので、ウッディ・ガスリーのレパートリー楽曲を歌い継いでいく。そこから浮かび上がってくるガスリーの人生と、彼の見たアメリカの姿。
 様々な楽曲が歌われる中、作品の核として何度も繰り返し挿入されるのが「The Ballad Of Tom Joad」というガスリーの自作曲。トム・ジョードはジョン・スタインベックの小説「The Grapes Of Wrath」(怒りの葡萄)の主人公で(ブルース・スプリングスティーンも「The Ghost Of Tom Joad」という曲を書いている)、彼は大恐慌の頃に、まさに「土地を失った農民」から「季節労働者」になって「社会」の「底辺」を彷徨っていくことになる。
 2007年に作られてから各地で上演されてきたというこの舞台が、ドナルド・トランプが大統領になった年にニューヨークに登場することになったのは偶然ではないと思うのだが。

 考案デイヴィッド・M・ラトケン&ニック・コーリー、ダーシー・ディーヴィル、ヘレン・ジーン・ラッセル、アンディ・テイアースタイン。
 演出ニック・コーリー。

 音楽監督も兼ねるデイヴィッド・M・ラトケンは本来ミュージシャンのようだが、『The Civil War』『Ring Of Fire』にも出演していて、共同考案のダーシー・ディーヴィル、ヘレン・ジーン・ラッセルと共に、この舞台にも登場する。出演はもう1人、デイヴィッド・フィンチ。
 

 『Sweeney Todd』(7月30日19:30@Barrow Street Theatre)のオフ版を2度観ることになった理由は、前回の感想に書いた通り。

 そちらに「主演を替えながら上演を続けた」と書いたが、この時の主演は、スウィーニー・トッド役ノーム・ルウィス(『The Who’s Tommy』『Side Show』『The Wild Party』『Amour』Dessa Rose『Les Miserables』『Golden Boy』『The Gershwins’ Porgy And Bess』)、ラヴェット夫人役キャロリー・カーメロ(『Falsettos』『Parade』『A Class Act』『Funny Girl: The Concert』『Elegies: A Song Cycle』『Baby』『Lestat』『The Addams Family』『Scandalous: The Life And Trials Of Aimee Semple McPherson』『Finding Neverland』『Tuck Everlasting』)の2人。個人的には前回より盛り上がった。
 他に、ジョン=マイケル・ライルズ、ターピン判事役ジェイミー・ジャクソン(『Soul Doctor』『The Last Ship』『Doctor Zhivago』)、ステイシー・ボノ、が前回と替わった顔ぶれ。ブラッド・オスカーとマット・ドイル、それに前回書き落としたアレックス・フィンクの3人が残っていた。

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