The Chronicle of Broadway and me #370(Baby)

2004年4月@ニューヨーク(その8)

 『Baby』(4月22日14:00@Paper Mill Playhouse)の初演は1983年のブロードウェイ。プレヴューが始まったのが1983年11月で、翌1984年の7月に閉幕している。
 この公演は、それから約20年後のニュージャージーでのリヴァイヴァル。観劇当時に旧サイトに書いた感想は次の通り。

<3組の男女の愛の行方を妊娠をめぐる日常の中で追う、ある種のコンセプト・ミュージカル。設定や楽曲の1980年代的印象がやや古く感じられるが、いい楽曲がいくつかあり、役者もうまかった。>

 というわけで、タイトルは文字通り「赤ん坊」のこと。
 コンセプト・ミュージカルと言っているのは、ソンドハイム『Company』との類似を感じてのことだと思う。複数のカップルの話、というあたり。
 ちなみに、初演版のカップルは全員が白人のようだが、20年後のこの公演は半分がアフリカン・アメリカンになっている。すなわち、白人同士、アフリカ系同士、そして、一番若い2人が白人とアフリカ系。その一番若いカップルの白人男性役が後に『Memphis』でアフリカ系女性と禁断の恋に落ちるチャド・キンボールなのが、偶然とはいえ面白い。
 しかし、そうした人種の問題に加え、さらに17年後の“今”の感覚では、登場する3組のカップル全てがヘテロセクシュアルであることに違和感を覚えなくもない……のだが、まあ、これは17年前の舞台の話。

 役者は、キンボールの相手役がモエイシャ・マッギール、でもって残る2組のカップルが、キャロリー・カーメロ+マイケル・ルパート、ラシャンズ+ノーム・ルウィスと強力。「うまかった」と感じるはずだ。

 「やや古く感じられるが、いい楽曲」を書いたのは、デイヴィッド・シャイア(作曲)とリチャード・モルトビー・ジュニア(作詞)の『Big』コンビ。モルトビー・ジュニアは初演では演出もしている。
 脚本シビル・ピアソン。
 このペイパー・ミル版の演出・振付はマーク・S・ホービー。

 細部を確認しようと英語版ウィキペディアで検索していたら、2019年暮れにオフで上演されたリヴァイヴァル版のことが載っていて、カップルの1組がレズビアンになっていたらしい。むべなるかな。