The Chronicle of Broadway and me #732(Soul Doctor)

2013年7月@ニューヨーク(その2)

 『Soul Doctor』(7月23日20:00@Circle In The Square)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<昨年夏にオフのニューヨーク・シアター・ワークショップでの公演が評判になった作品らしい。
 “歌うラビ”(The Singing Rabbi)として知られた(僕は知らなかったが)実在の歌手にしてユダヤ教のラビ、シュロモ・カルリバッハの半生を描いた作品(使用楽曲は本人の持ち歌で大半が自作)。オンでは7月17日にプレヴュー開始、8月15日に正式オープンしたが、10月13日に幕を下ろした。

 シュロモの音楽活動の背景には、子供時代に、ナチス占領下のオーストリアでユダヤ人のストリート・シンガーが殺害されるのを目撃したことがあった。
 家族でアメリカに移住し、成長したシュロモは、1950年代末、グリニッジ・ヴィレッジでニーナ・シモンと出会い、歌への情熱をかき立てられる。折からのフォーク・ソング・ブームに乗って“歌うラビ”は世に出るが、一方で、ラビの伝統を重んじる父との軋轢が増す。その後サンフランシスコに移ったシュロモは、時代の空気の中でコミューンを形成するが、理想と現実の狭間で悩むことになる。

 前半の有名になっていくあたりまではテンポもよく、勢いがあって楽しい。主演のエリック・アンダーソンの歌も力強い。が、舞台がサンフランシスコになるあたりから展開が単調になる。ニーナ・シモン役が出てきて歌うとホッとするぐらいだ。
 主人公のキャラクターが生真面目に過ぎたのかもしれない。閉幕も致し方あるまい。>

 作曲及び一部の作詞はシュロモ・カルリバッハ自身。で、作詞がデイヴィッド・シェクター。元々シュロモが歌っていたのはヘブライ語聖書や祈祷書から採った詞に曲を付けたもの。その詞を、ミュージカル化にあたってシェクターが新たに書き変えた、ということなのだろうか。イマイチわからない。
 脚本・演出ダニエル・S・ワイズ。発案ジェレミー・チェス。創案・構成がワイズとシェクター。振付ベノワ=スワン・プファー。

 シュロモ役のエリック・アンダーソン(『Kinky Boots』)は、ここからスターになっていく。ニーナ・シモン役アンバー・イマンの歌は迫力があり、印象に残った。