The Chronicle of Broadway and me #422(Sweet Charity[2]/Miracle Brothers)

2005年9月@ニューヨーク(その9)

 残り2作品をまとめて。

 『Sweet Charity』(9月23日20:00@Al Hirschfeld Theatre)について旧サイトに書いた再見当時の感想(<>内)。

前回観られなかったアップルゲイト。充分に魅力的で、客を呼べる人ではある。が、踊りに関しては、健闘しているが、やはりダンサーではないと思わざるをえなかった。
 とは、かなり厳しい目で観た話で、まあ、リヴァイヴァルとしては文句ないでしょう。
 再見したら細かい工夫もちゃんと見えて、またしても楽しみました。>

 クリスティーン・アップルゲイトのダンスについての評価は、アップルゲイト不在のプレヴュー公演を支えた名ダンサー、シャーロット・ダンボワーズと比較しての話。
 なお、観た回はデニス・オヘアが休演で代役ディモシー・エドワード・スミス(『Dream』『Annie Get Your Gun』『Aida』)だった。
 この公演も、この年の大晦日で幕を下ろしてしまう。『Sweet Charity』が長く続かない理由って何なんだろう?
 

 『Miracle Brothers』(9月24日20:00@Vineyard Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。……と言っても、半分しか観られなかったので中途半端だが(苦笑)。

<ブラジルを舞台にした、神秘性を秘めた面白い作品だったが、こちらに書いた理由で後半を観られず、消化不良。>

 その「こちら」が以下の通り。

<幕間も終わりに近づき、第2幕を観ようと観客が席に戻ってきた頃、スタッフが舞台に現れて、「申し訳ないが、出演者の1人が声が出なくなったので、今日の公演は続けられない」と言う。ついては後日改めて振り替えで観ていただくので連絡をくれ、と、ゼネラル・マネージャーの名刺をみんなに渡すスタッフ(彼がゼネラル・マネージャーか?)。
 後日って言われてもなあ、と、2日後にはニューヨークを離れる極東からの旅行者は思ったのだが、劇場窓口はすでに閉まって発券業務は終わっているし、ま、次回の渡米時にも公演が続いていることを祈って「後日」劇場側と相談してみるしかないか、という結論に達した。>

 結局、次回渡米時(11月)には終わっていて観られなかったのだが、それが実に惜しいと思わざるをえない布陣のプロダクションだった。

 ます役者(アルファベット順)。カッコ内は、この作品以前のオリジナル・キャストとしての出演作。
 ケリー・バトラー(『Bat Boy: The Musical』『Little Shop Of Horrors』『Hairspray』)、シェリル・フリーマン(『The Who’s Tommy』『Fame』)、ジェイ・ゴード(『A Year With Frog And Toad』)、アニカ・ラーセン(『All Shook Up』)、ニコール・リーチ(『Fame』)、タイラー・メイナード(『Altar Boyz』)、カレン・オリーヴォ(『Brooklyn: The Musical』)、デヴィン・リチャーズ(『Carousel』『Victor/Victoria』『Jesus Christ Superstar』『Seussical』『Wounderful Town』)、グレゴリー・トレコ(『Taboo』)、ウィリアム・ユーマンズ(『La Boheme』『Wicked』)。
 この他に2人いて、1人がメイナードと共に奇跡兄弟の片方を演じるクリフトン・オリヴァー。彼は途中参加ながら『The Lion King』(シンバ役)と『Wicked』に出演。もう1人のダレル・グランド・モールトリーもブロードウェイ作品出演経験者だが、それよりも、後に振付家として活躍するようになるダンサーで、ここではダンス・キャプテンを務めている。

 メインのスタッフは次の通り。
 作曲・作詞・脚本がカーステン・チャイルズ。元々は役者だった人で、1980年代にはブロードウェイの『Jerry’s Girls』やリヴァイヴァル『Sweet Charity』に出ている。12年後に『Bella: An American Tall Tale』という、これまた面白い作品で再会することになる。
 そもそもが彼女目当てで観に行ったと思うのが、演出のティナ・ランドウ(『Floyd Collins』『Dream True』『Bells Are Ringing』)。
 振付がマーク・デンディ。この人も『Taboo』人脈。ここでは、ブラジルのカポエイラの動きを意識したアクロバティックで斬新なダンスを生み出していた。

 神話のような雰囲気を持った、なにがしかの哲学が背景にあると思われる作品で、前回このヴィニヤード劇場で観たティナ・ランドウ演出作品『Dream True』にもつながる、不思議な空気感が印象に残っている。

 [追記]
 当時のプレイビルオンラインに載った紹介記事を要約すると作品の内容は次のようになる(<>内)。

<人種、血縁、冒険、そして自由についての壮大な音楽物語。
 2人の若いブラジル人兄弟の物語で、1人は黒人、1人は白人。前者は奴隷で、後者は自由の身だが愛によって束縛されている。それぞれが自由と自己決定の旅をする魔法のような物語。
 舞台は17世紀のブラジル(※)。2人は父親の農園の敷地から外の世界へ出ていく。
 反逆者の海賊やスペイン貴族の逃亡奴隷など、多彩なキャラクターが登場し、歌うイルカの合唱も登場する。
 スコアと振付は「ブラジル風」で、ショウでは「本物のブラジルの楽器演奏」と「ダンスと護身術の伝統的でブラジル独特の融合」であるカポエラがフィーチャーされる。>

 ※プログラムに載っている時と場所の設定は、現在と過去、ブラジル・バイーア州、となっている。
 「現在」からの回想、という構成だったのかも。
 バイーア州はブラジル北東部。同州のサルヴァドールの港を通じ、砂糖農園で働く奴隷の貿易が行われ、多数のアフリカ人が流入。現在も黒人、混血の割合がブラジルの他の州と比べても高いという。