The Chronicle of Broadway and me #271(Bat Boy: The Musical/A Class Act[2])

2001年4月@ニューヨーク(その8)

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 『Bat Boy: The Musical』(4月8日15:00@Union Square Theatre)は、後に『Legally Blonde: The Musical』を細君のネル・ベンジャミンと共同で書くことになるローレンス・オキーフが単独で作曲・作詞した作品。

 オキーフの活動拠点が西海岸なのか、あちらで初演されているものが多く、この作品も、1997年にカリフォルニアの劇場で、まずは幕を開けている。そのことと関係があるのかどうかわからないが、観劇当時、ドラッギーな雰囲気を感じたのを覚えている。
 ネタ元がウィークリー・ワールド・ニュースという東スポ的なタブロイド紙に載った「こうもり少年」の話だという辺りからして怪しげ(笑)。半分少年、半分こうもりの「こうもり少年」が洞窟で見つかった、という記事らしい。

 洞窟で発見された「こうもり少年」を、とある獣医一家(両親と若い娘)が保護することになるところから話は始まるのだが、その娘役がケリー・バトラーだというところで、作品のおおよその空気感はわかる。どこかパロディじみた、B級な感覚の、例えば『The Rocky Horror Show』のような……。
 ……てなことは、実は『Hairspray』以降の彼女を知っている今だから言えることで、この時点では彼女を観るのは初めてだった。
 実のところ、あの“ちょっとオトボケ”な感じは、この『Bat Boy』から発揮され始めたようで、これ以前は、『Blood Brothers』のミス・ジョーンズ役他(ブロードウェイ・デビュー)、『Beauty And The Beast』のベル役(トロント版→ブロードウェイ)、『Les Miserables』のエポニーヌ役、といった具合で、一応“二の線”。まあ、ベルのキャラクターには潜在的に“ちょっとオトボケ”が含まれている気もするが、いずれにしても、次の『Hairspray』のペニー役以降はオリジナル・キャストで、リヴァイヴァル版『Little Shop Of Horrors』のオードリー役、『Xanadu』の主演女優と、オトボケ路線をひた走る。バトラーの演じるそうしたキャラクターは、直近の『Beetlejuice』まで、ほぼ一貫している。
 そう考えると、この『Bat Boy』は、ケリー・バトラーが“開眼”した作品として貴重か。

 閑話休題。好きなバトラーについて語り過ぎた(笑)。
 物語の核心は「こうもり少年」と彼を保護することになった獣医一家との秘密の過去にあるのだが、その真相がじわじわと見えてくる辺りが、話としてよくできているところではある。一方で、笑いをまぶしながらも、異形の者に対する小さなキリスト教コミュニティの排斥感情が薄気味悪く描かれているのも話に厚みを加える。脚本はキース・ファーリー&ブライアン・フレミング。
 それにしても、先に「ドラッギーな雰囲気」と書いた、観劇後の気持ち悪い印象は、なんだったんだろう。「こうもり少年」が、ときに露悪的にセクシャルな存在として描かれることに対する、ある種の嫌悪感だった可能性はなくもないが。あるいは主要人物が最後にまとめて死んでしまうことと関係あるのか……。具体的には覚えていない。

 ローレンス・オキーフの楽曲は、これ!という1曲はないが、多彩で飽きさせない。
 中で、2幕のアタマの伝道集会場面で歌われる「A Joyful Noise」が面白い。伝道師が歌うゴスペル調のナンバーなのだが、ノリノリの伝道師のコールに対して、集会に来ている連中が気のないレスポンスを返す。気がないだけでなく、ハモってもいないというグダグダぶり。笑える。

 「こうもり少年」役のデヴェン・メイと、獣医の妻役のケイトリン・ホプキンズは、カリフォルニア初演と同じ。獣医役はショーン・マッコート。
 演出は『Jane Eyre』をジョン・ケアードと共同で手がけているスコット・シュウォーツ。振付はクリストファー・ガッテリ。

 9.11を乗り越えて、この年の12月2日まで続いている。

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 A Class Act(4月5日20:00@Ambassador Theatre)がブロードウェイの劇場に舞台を移した。本当は作品中の設定であるシューバート劇場でやりたかったところだろうが、まあ所期の目的は果たした、というところか。

 内容は、オフ版と全く変わりはなかった。
 そのオフ版の感想でも書いたが、主要な登場人物の1人ルーシー役のキャロリー・カーメロが出産のためにブロードウェイ版には参加しなかった。他に、ジョナサン・フリーマン、ジュリア・マーニー、レイ・ウィルスも降りている。代わって参加したのは、ドナ・ブロック、サラ・ラミレズ、パトリック・クィン、ジェフ・ブルメンクランツ。
 半数が入れ替わったわけだが、メインのロニー・プライスとランディ・グラフがいる限り、まあ、印象は変わらない。

 トニー賞では、ミュージカル作品賞、楽曲賞、編曲賞、脚本賞、主演女優賞(グラフ)の候補になったが、受賞はしなかった。授賞式の1週間後に幕を下ろしている。

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