The Chronicle of Broadway and me #401(The Baker’s Wife)

2005年4月@ニューヨーク(その7)

 『The Baker’s Wife』(4月14日14:00@Paper Mill Playhouse)は、おなじみニュージャージーのペイパー・ミル・プレイハウスの期間限定公演。
 旧サイトに書いた観劇当時の感想は次の通り(<>内)。

<フランスの山中にある小さな村を舞台にした渋い作品。
 年配の夫と若い妻と若い男、という人間関係のドラマは、フランク・レッサーの『The Most Happy Fella』によく似ている。役者が粒ぞろいで、抑えた色調の凝ったセットと相まって、充実感のある舞台を生んでいた。
 スティーヴン・シュウォーツの楽曲は、歌い上げすぎの面はあるが、シャンソンを意識したと思しい何曲かは、設定にうまくハマって魅力的。>

 1938年の同名フランス映画(原題:La Femme Du Boulanger)のミュージカル舞台化で(映画の元になった小説もあるようだ)、1989年にウェスト・エンドで初演。
 小さな村に新しくやって来たパン屋の夫婦は、年配の夫と若い妻だった。いろいろ噂される中、妻は若い男と駆け落ちし……という話。
 英語版ウィキペディアによれば、最初は1952年に、フランク・レッサー(!)とエイブ・バロウズのコンビでミュージカル化が計画されたが頓挫(ということは、『The Most Happy Fella』初演以前の話だから、フランク・レッサーはここでのアイディアを同作に転用した可能性もあるのか)。1970年代半ばになってデイヴィッド・メリックが舞台化権を獲得。このスティーヴン・シュウォーツ(楽曲)×ジョセフ・スタイン(脚本)のチームが結成されるも、アメリカ国内での試行錯誤は実らず(試演は行なわれたらしい)、結局、トレヴァー・ナン演出による前述のウェスト・エンド公演まで引っ張ることになったようだ。
 そのウェスト・エンド公演も短命に終わっているが、劇場に来た観客にはウケたがチケットが売れなかった、というスティーヴン・シュウォーツの証言が残っている。広くアピールするだけの魅力が素材になかった、ということだろう。外国の閉鎖的なコミュニティの、それも必ずしも楽しいばかりの話ではないので、わからないでもない。

 このプロダクションの主な出演者は、今まさに渦中の人となっているアリス・リプリー(『Side Show』『James Joyce’s The Dead』『The Rocky Horror Show』、次作が『Next To Normal』)がパン屋の若い妻、年配のパン屋役がレニー・ウォルプ、妻と駆け落ちする若い男がマックス・フォン・エッセン(『Dance Of The Vampires』)、狂言回し的な役割のカフェの経営者夫婦がゲイ・マーシャルとリチャード・プルーイット 。
 演出ゴードン・グリーンバーグ。振付はこの後どんどん台頭してくるクリストファー・ガッテリ(『Bat Boy: The Musical』)。

 なお、アリス・リプリー事件に関しては、2021年8月29日現在、こちらの記事がかなり公正で丁寧だと思われます。

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