The Chronicle of Broadway and me #384(Brooklyn: The Musical)

2004年11月@ニューヨーク(その4)

 『Brooklyn: The Musical』(11月20日14:00@Plymouth Theatre)について観劇当時、旧サイトに書いた感想(<>内)。

『Rent』から『Wicked』へと続く“ロック風味熱唱系”(と命名したい)作品。
 2時間に満たない1幕物であり、物足りなさがなくもないが、構成にアイディアがあり、好意的に観た。が、“ロック風味熱唱系”の流れは、時流への安易な迎合スレスレのところもあり、微妙。>

 翻訳公演も行なわれているようだから、ご承知かもしれないが、「構成にアイディア」とは、劇中劇のスタイルのこと。
 現代のニューヨーク。ブルックリン・ブリッジのたもとにたむろする5人のホームレス。シティ・ウィーズ(街の雑草)と名乗り、パフォーマンスで日銭を稼いでいる。演目は、ブルックリンという名の娘の物語。これが外枠。
 ブルックリンはパリ生まれの歌手。父親はその昔パリを訪れたアメリカ人で、パリに住む母親と恋に落ちるが、徴兵でヴェトナムに行ったきり帰ってこない。妊娠していた母親は一人でブルックリン(名前の由来は父親の出身地)を生んで育てるが、戻らぬ父に絶望してか、自殺してしまう。預けられた修道院で歌の才能を開花させたブルックリンは、注目を浴び、カーネギー・ホールでのコンサートを成功させる。と同時に、父親捜しも始めるが、行く手に地元のディーヴァであるパラダイスが立ちはだかり、マディソン・スクエア・ガーデンで対決することになる。これが劇中劇。

 スタイルはともかく、劇中劇の中身が、なんと言うか、なかなかにエグい。まあ、そのエグさを、劇中劇ですから、というスタイルで受け入れさせているわけだが。
 ただ、気になるのは、ヴェトナム帰還兵と彼のドラッグ禍(だとわかる)、という現実的な問題を扱っているにもかかわらず、それがエグい話の中に埋没している感じがしたこと。1幕2時間弱でとっとと終わってしまうのも、そうした事案に対する向き合い方が半端な気がした一因かもしれない。

 マーク・ショーンフェルド&バリー・マクファーソン(作曲・作詞)の楽曲は前述したように、“ロック風味熱唱系”のものが多い。そのせいで、いささか飽きる部分がある。加えて、『Rent』以降“この手”のミュージカルに特徴的になった“サクラ”かと思うような熱狂的ファンが一部に生まれていて、1曲ごとに盛り上がるのでシラケたところもある。
 いずれにしても、その場では盛り上がるし、歌ってる方は気持ちがいいのかもしれないが、聴いた後に残るものが少ない気がする、というのが楽曲全般に対する個人的見解。
 ちなみに、ホントかどうか知らないが、ショーンフェルド自身が一時ホームレスだったという話もある。

 脚本もショーンフェルド&マクファーソン。演出・振付ジェフ・カルホウン。

 ブルックリン役のイーデン・エスピノーザは、ここに出演する前に、『Rent』でモーリーン、『Wicked』でエルファバを演じている(笑ってしまうほど推測通りの路線)。
 彼女のライヴァルとして登場するパラダイス役は、『Caroline, Or Change』でラジオ役の1人だったラモーナ・ケラー。
 そして、ブルックリンの母役が4年後に『In The Heights』で一躍注目を浴びるカレン・オリーヴォ。……なのだが、観た日は代役でジュリー・レイバー。オリーヴォと、ここですれ違っていたとは。
 なお、役者は、主要の5人の他に、歌手として3人、スウィングが2人登場する。