The Chronicle of Broadway and me #385(She Loves Me[N.J.]/Cinderella[City Opera])

2004年11月@ニューヨーク(その5)

 ブロードウェイ以外でのリヴァイヴァル2作品。

 『She Loves Me』(11月18日14:00@Paper Mill Playhouse)についての観劇当時の感想(<>内)。

前回の『Guys And Dolls』同様、ニュージャージーはペイパー・ミル・プレイハウスでの公演。
 ラウンダバウトによる1993/1994年シーズンのリヴァイヴァルに負けない仕上がりで、元がよくできた作品であることを再認識。>

 『She Loves Me』のリヴァイヴァル版を観たのが10年以上前。久々だったし、その分こちらの気持ちが盛り上がったことが、この好評価の背景にあるとは思う。ではあるが、それなりの役者を集めて堅実に作れば面白く仕上がるだけの要素を持っている作品だとも思う。ま、ブロードウェイのヒット作だし、当然か(笑)。

 ヒロインのアマリアを演じていたのはミシェル・ラグサ。ブロードウェイ出演は豊富だが、アンダースタディや途中参加の多い人。うまいけれども、そこまで華のないひと、ということになるのかもしれないが、それもブロードウェイ・レヴェルでの話。ちなみに、現時点での次回作はコロナ禍でプレヴュー開始が今秋に延期になっている『Flying Over Sunset』の予定(この作品を観ることができるのだろうか)。
 もう一人の女性店員イローナ役のナンシー・アンダーソンのことは、よく覚えている。『A Class Act』でブロードウェイ・デビューした人で(当時ナンシー・キャスリン・アンダーソン)、この公演の前には『Wonderful Town』に出ていた。
 男性の方の主役ジョージは『Passion』『The Scarlet Pimpernel』(主演のアンダースタディ)を経て来ているジョージ・ドゥヴォースキー。……といった具合で、ブロードウェイ経験者多数。舞台となる香水店の経営者ミスター・マラチェックを演じるジョージ・S・アーヴィングは、なんと『Oklahoma!』のブロードウェイ初演に出ていたらしい。

 演出・振付ジェイムズ・ブレナン。

 メインの男女が表面上敵対することや、途中で変わった雰囲気のレストランが出てきてショウの見せ場になることやなんかが、『the Pajama Game』と似てると思うのだが、どうだろう。
 

 『Cinderella』(11月18日19:30@New York State Theater)は、今は亡きニューヨーク・シティ・オペラのレパートリー公演。
 観劇当時の感想は次の通り(<>内)。

<ロジャーズ&ハマースタインのTV版(近々、放映以来初めて再見の機会が生まれるとか)をシティ・オペラがレパートリー化したもの。
 で、今回は女優陣(?)が濃くて強力。魔法使いがアーサ・キット、継母がジョン・“リップシンカ”・エッパーソン、義姉がアナ・ギャステイヤーとリー・デラリア。大半の客は彼らを観にきたと思しい。期待に応える怪演、いや快演だった。>

 「 女優陣(?) 」と書いているのは、ジョン・“リップシンカ”・エッパーソンがドラァグ・クイーンだから。“リップシンカ” と名乗っている通り口パク芸がウリモノなのだが、この時も口パクだったのかどうかは全く覚えていない。
 上の感想に書いていないシンデレラ役は、サラ・ウリアート・ベリー。オリジナル・キャストではないが、早い段階で『Beauty And The Beast』にベル役で出ていて(2度目に観た時がこの人だった)、この公演の直前の出演が『Taboo』、翌年は『The Light In The Piazza』に出ることになる。
 王子役クリストファー・シーバーもブロードウェイではおなじみの人。

 演出・振付は『A Chorus Line』のオリジナル・キャストとして知られるバイヨーク・リー。

 ロジャーズ&ハマースタインの『Cinderella』は、ジュリー・アンドリューズ主演でTV用に作られ、1957年にオンエアされている。映像としては、その後、1965年版(女王役ジンジャー・ロージャーズ)、1997年改変版(ホイットニー・ヒューストン、バーナデット・ピータース、ウーピー・ゴールドバーグ他)が作られているが、その“初演”版が初めてソフト化されたのが、この年。ミュージカル好きの間で話題になった。
 長らくソフト化されていなかったのは、オンエア当時のヴィデオテープが残されていなかったためで(時差のある西海岸オンエア用の録画は使用後破棄されたようだ)、キネスコープでテレビ映像から変換したモノクロのフィルムが辛うじて残っていて、それを元にしたソフト化が実現した、ということらしい。たいていの記録は残っているアメリカでは珍しい。しかし、てことは、元はカラー放送だったのだろうか。惜しい。