The Chronicle of Broadway and me #437(Fanny Hill/Passing/The Lion King[3]/The Seven)

2006年2月@ニューヨーク(その7)

 この回の渡米で観た残り4作をまとめて。

『Fanny Hill』(2月15日20:00@Theatre At St. Peter’s)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ポルノグラフィの古典として名高い18世紀英国同名小説のミュージカル化。
 時代設定に合わせて楽曲はオペレッタ風味だが、これが魅力的。さらに、原典の大らかな気分を反映したユーモラスな演出が大受け。
 少人数の達者な役者たちが早替わりで様々な役を演じるのも楽しい。>

 「達者な役者たち」には、ファニー役のナンシー・アンダーソン(『A Class Act』『Wonderful Town』She Loves Me』@ペイパー・ミル・プレイハウス)の他、エミリー・スキナー(『Side Show』『James Joyce’s The Dead』『The Full Monty』『My Life With Albertine』)、トニー・ヤズベク(『Oklahoma!』『Never Gonna Dance』)らが含まれる。
 作曲・作詞・脚本エド・ディクソン。演出ジェイムズ・ブレナン。


『Passing』(2月17日20:00@Wow Cafe Theater)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<オフ・オフのパフォーマンス。
 若い女性ばかりのカンパニーで、偏見と差別に満ちた世界へのメッセージを、ある種のダンスとセリフとで伝えようとする。
 生硬な部分がないではないが、それなりの説得力はあった。>

 原案・演出ナナ・デイキン。

 この作品を観ることになった事情を旧サイトの当時の記述から引くと、次のようなこと。

<公演当日の夕方に窓口まで出向いてチケットを買ったオフのミュージカル『The Seven』の夜公演が、出演者急病のためにキャンセルになってしまった。
 (中略)ショックだったのは、劇場に着いて公演キャンセルを知ったのが7時50分過ぎだったってこと。夜公演は基本的には8時からなので別の公演を観ることもできない!
 劇場の場所はイースト・ヴィレッジの南の方。ということは、最も近いのは3ブロック半離れた『Stomp』で、その次がBlue Man Group『Tubes』か。『Stomp』なら走れば間に合うかも。などと逡巡する内に時間は過ぎる。
 と、その時、劇場前の通りに置いてある小さな看板に目が留まった。アフリカっぽい仮面のイラストが描いてある。残念ながら「MUSICAL」の文字はないが、「PLAY」と書いてある。どうやら目の前の小さなビルの中に劇場があるようだ。
 貧乏性の決断は早い。何も観られないよりは何でもいいから観る。急いでエレヴェーターもないビルの4階まで上って、15ドルを払い(50ドル札を出したら窓口の女の子はジーンズのポケットから釣りを出した。でもって、チケットはない)、手作りの客席が3列だけ並んだ小さな劇場で、タイムアウト誌にも載っていない小規模なセリフ付きダンス・パフォーマンスを観た。>


『The Lion King』(2月18日14:00@New Amsterdam Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

前回以来8年ぶり、3回目のの観劇。
 なぜ観たかと言うと、ダブル・ブッキングのチケットを引き受けたから(※その事情は忘れた)。緩いスケジュールならではの選択。
 が、オーケストラ最前列の通路側という、かつてない良席で観る動物たちは、実に新鮮だった。パフォーマンスも、ロングランの“ダレ”を感じさせず、立派。>

 ちなみに、この時、悪役スカーを演じていたのは、後に『Spider-Man: Turn Off The Dark』『Hadestown』で出会うことになるパトリック・ペイジ。


『The Seven』(2月19日14:00@New York Theatre Workshop)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ギリシア悲劇のオイディプスとその息子たちの物語(タイムアウト誌によれば、めったに上演されることのないアイスキュロス作『Seven Against Thebes』という作品らしい)をヒップホップ・ミュージカルに仕立てたのが『The Seven』
 歌唱や演奏やだけでなく、作品全体の思想そのものがヒップホップ。であるがゆえに、語彙的に理解できない部分も多々あり、十全に楽しんだとは言いがたいが、活気のある舞台だったのは確か。>

 『Seven Against Thebes』は、山形治江「ギリシャ劇大全」では『テーバイ攻めの七将』と訳されている。
 山形は同著で同作について、「テーバイの七つの城門の攻勢と守勢を描写する台詞は、とにかく長い。(中略)聴くのは大変。幸運にも、すばらしい話術をもつ使者役に当たれば、ギリシャ悲劇の「語り劇」としての特徴を堪能できる。その意味で、本作品は舞台劇より朗読劇向きかもしれない。」と書いている。だからこそのヒップホップだったのだも。

 楽曲・脚本ウィル・パワー。演出ジョー・ボニー。振付ビル・T・ジョーンズ。

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