The Chronicle of Broadway and me #789(On The Town)

2014年10月@ニューヨーク(その2)

 『On The Town』(10月9日20:00@Lyric Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ブロードウェイでは、1971年、1998年に次いで3度目のリヴァイヴァル。もちろん1971年版は観ていないが、1998年版に加え、2008年のシティ・センター“アンコールズ!”版、2009年のペイパー・ミル・プレイハウス版を観ている。
 そして、いつも思うのは、ストーリーが緊密ではないということ。元がバレエ組曲(『Fancy Free』)なだけに、ミュージカルに発展させたこの作品でも、ダンス・ナンバーをスケッチ(短い話)で繋いでいく、という印象。なので、どこまで行っても“モダン・バレエ・ミュージカルの古典”の域を出ない(ちなみに、映画版/邦題:踊る大紐育は、おそらく、舞台版の弱みを解消する意味もあるのだろう、新たな楽曲を多数加え脚本も変更、ジェローム・ロビンズ+レナード・バーンスタインの世界とは違った仕上がりになっている)。

 とはいえ、毎回、色合いの違いはある。
 今回のプロダクションは、例えば1998年版のように大掛かりなセットを使って何らかの現代性を出そうとする方向とは逆に、初演が持っていたであろうシンプルな空気感を再現しようとしているように見えた。その分、物足りなくはあるが、ある種の爽やかさがあった。
 出演者も、強力なコメディ・リリーフとしてジャッキー・ホフマンが登場する他は、目立ったスターはいない。その辺にも、演出の意図が表れている気がする。
 印象に残ったのは名曲「Lonely Town」のシーン。ソロ歌唱に、客席に散ったアンサンブルがコーラスを付ける演出がしみじみとよかった。戦時中の若者たちの話なのだということを改めて思い起こさせた。>

 演出ジョン・ランドー(『Urinetown』『Dance Of The Vampires』『The Wedding Singer』『A Christmas Story The Musical』)、振付ジョシュア・バーガッシーは本作が振付家としてのブロードウェイ・デビュー。

 中心になる3人の水夫の1人を演じるトニー・ヤズベク(『Never Gonna Dnace』『Fanny Hill』『A Chorus Line』『Gypsy』)は、この作品あたりから主役級の扱いになっていく。
 その相手役アイヴィを演じたミーガン・フェアチャイルドはニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル・ダンサー。
 『Falsettos』『Legally Blonde: The Musical』のマイケル・ルパートも出ていた。