The Chronicle of Broadway and me #581(An Evening At The Carlyle/Ordinary Days/Talk Like Singing)

2009年11月@ニューヨーク(その6)

 オフの新作3本について、まとめて。

 『An Evening At The Carlyle』(11月17日19:00@Algonquin Theater)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ダウンタウンの劇場で日月火の夜だけ上演されている『An Evening At The Carlyle』は、アップタウン・イーストに実在するカーライル・ホテルのバー、ベメルマンズの“ある夜”という設定で展開するレヴュー。
 初めはバーに集う幾人かのニューヨーカーの生態を描いているが、途中から有名人キャラクターが登場してきて、そっくりショウの様相を帯びてくる。その意味では、オフの名物シリーズ『Forbidden Broadway』に通じる。
 この手のショウの常で、少人数の達者な役者が複数の役を演じ分ける。1度は観てもいい。>

 作曲・作詞アル・タッパー。
 演出トム・ハーマン。
 『Fosse』『Thou Shalt Not』『Oklahoma!』『The Look Of Love』『Dirty Rotten Scoundrels』に出ていたレイチェル・ラックが役者兼振付で参加。
 

 『Ordinary Days』(11月18日19:00@Black Box Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ラウンダバウト劇場が自分たち専用の小さなオフ劇場で上演したオリジナル作品。
 ニューヨークで暮らす2組のカップルの“普通の日々”の物語。これが、いい出来。
 あるカップルは一緒に住もうとして関係が壊れていき、もう1組は、ふとしたことで知り合い、やがて互いを理解し合う。前者は、どちらかと言えば普通の大人の男女だが、後者の2人のキャラクターが面白く(単純に言うと、人間同士のつながりを信じるオタクの男と、自分のことしか見えなくなってる上昇志向の女)、オタクの男の願う人間同士のつながりが全体のテーマになってくる。
 脚本(と言うか全て歌だが)がていねいで、アイディアがつまっていて、笑えて、感動する。ブロードウェイ級の役者を揃えて20ドルで上演するラウンダバウトの志は偉い。
 作曲・作詞アダム・グウォン、演出マーク・ブルーニ。>

 「オタクの男」と書いているが、むしろ「夢見がちな男」という感じなのがウォーレン。演じるのがジェアード・ガートナー(『Little Shop Of Horrors』@N.J.)。その相手役デブがケイト・ウェザーヘッド(『The 25th Annual Putnam County Spelling Bee』『Legally Blonde』)。
 もう1組のカップル(最終的には「夢見がちな男」がビルの屋上からばらまいた肯定的な文言を書いたフライヤーのおかげで関係が修復する)が、クレア役リサ・ブレスシア(『Jesus Christ Superstar』『The Woman In White』『The Time They Are A-Changin’』)と、ジェイソン役ハンター・フォスター(『Urinetown』『Little Shop Of Horrors』『Frankenstein』『Happiness』)。
 この後、今日に到るまで、イギリス、オーストラリアをはじめ、世界各地で上演され続けているようだ。終盤にクレアの歌うバラード「I’ll Be Here」は、オードラ・マクドナルドやリズ・キャラウェイによってレコーディングされている。
 

 『Talk Like Singing』(11月21日14:00@Skirball Center For The Performing Arts)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<三谷幸喜脚本・演出のミュージカル。ニューヨーク大学校舎ビル内の劇場で上演され、スタッフも大半が日本人だったようだ。
 生まれついて歌うようにしか語れない患者(香取慎吾)の症状改善を試みた心理学者(川平慈英)が、東京からニューヨークにやって来て行なう研究発表会、という設定。したがって、もっぱら川平が英語でしゃべり、残る3人(香取、堀内敬子、新納慎也)はほとんど日本語。
 観客は9割程度が日本人だったが、現地在住の人が多かったようで、川平の英語のジョークで笑っていた。
 脚本が甘く、川平のキャラクターと個人芸に頼りっぱなしなのが気になる。
 香取と堀内のデートのシーン等、場面としては観るべき部分もあり、小西康陽の音楽も悪くないのだが、成功作とは言いがたい。>

 振付は原田薫。
 翌年、赤坂ACTシアターでも上演された。