The Chronicle of Broadway and me #394(Harold & Maude/Lone Star Love/Forbidden Broadway: Special Victims Unit)

2005年2月@ニューヨーク(その7)

 『Harold & Maude』(2月3日14:00@Paper Mill Playhouse)は、ハル・アシュビー監督による同名映画(1971年)の舞台ミュージカル化。映画邦題『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』。
 観劇当時の感想は次の通り(<>内)。

『The Fantasticks』の作者トム・ジョーンズの新作。
 ラディカルな老女と人生に絶望している青年の心の交流を、皮肉なタッチのコメディに仕上げた快作。楽曲もいい。>

 トム・ジョーンズは作詞・脚本で、作曲はジョセフ・サルケン。ジョーンズの長年の相棒で、『The Fantasticks』の他に『110 In The Shade』『I Do! I Do!』を共作した作曲家ハーヴェイ・シュミットは、すでに引退していたらしい。

 出演は、青年ハロルド役がエリック・ミレガン(『Jesus Christ Superstar』)、老女モード役がエステル・パーソンズ。彼女は映画『Bonnie And Clyde』(俺たちに明日はない)でクライドの兄(ジーン・ハックマン)の妻を演じてオスカーを獲った人で、ブロードウェイにも1950年代から出続けている。最近では『Nice Work If You Can Get It』でマシュー・ブロデリックの母親役を演じていた。
 キャストは計5人と小規模だが、残る3人がなかなか強力。ハロルドの母親役がドナ・イングリッシュ(『Ruthless!』)。複数の役をこなすのが、ダニー・バースタインとドナ・リン・チャンプリン。前者は、この後『The Drowsy Chaperone』『South Pacific』から直近の『Moulin Rouge! The Musical』までスターとしてブロードウェイに出続ける。後者は、直前に『Hollywood Arms』、直後にジョン・ドイル演出版『Sweeney Todd』に出演している。

 演出・振付マーク・S・ホービー。

 ちなみに、同じ原作のストレート・プレイが『Harold And Maude』のタイトルで1980年にブロードウェイに登場しているが、プレヴュー21回、本公演4回で幕を下ろしている。第1回アカデミー賞(1929年)で主演女優賞を獲ったジャネット・ゲイナーが出ていたらしい。最初の『A Star Is Born』(邦題:スタア誕生)のヒロインだった人ですね。
 

 『Lone Star Love』(2月5日14:00@John Houseman Theatre)には、「or, The Merry Wives Of Windsor, Texas」という副題が付いている。というわけで、『ウィンザーの陽気な女房たち』という邦題で知られるウィリアム・シェイクスピアの戯曲が原作。
 意地汚く女性に目のない巨漢ファルスタッフが“女房たち”にやりこめられるコメディ。同名、あるいは『Falstaff』(ファルスタッフ)と題されたオペラ化作品も有名。

 観劇当時の感想は次の通り(<>内)。

<南北戦争当時のテキサスのウィンザーという町で起こる陽気な女房たちをめぐる物語。
 というわけで、シェイクスピアとアメリカン・ルーツ・ミュージックが融合。現代感覚もあり、楽しい一編。>

 楽曲作者はジャック・ヘリック。『Fool Moon』『Wilder』でも触れたアメリカーナ音楽を演奏するバンド、レッド・クレイ・ランブラーズの中心メンバーで、同バンドのクレイ・バックナー(フィドル)、クリス・フランク(ギター)と共に、舞台上に登場して演奏する(他に役者3人が楽器演奏)。
 やはり同バンドのメンバーの1人ブランド・シンプソンと、創設メンバーだったトミー・トンプソンとが、補作曲・補作詞でクレジットされている。
 翻案のジョン・L・ヘイバーもレッド・クレイ・ランブラーズとは以前から仕事をしている人。
 一方、演出のマイケル・ボグダノフはシェイクスピア寄りの人。ウェールズ生まれで、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーなどの作品に関わってきている。
 振付はランディ・スキナー(『State Fair』『42nd Street』『Irving Berlin’s White Christmas』)。

 中心になる“女房”フォード夫人役でベス・リーヴェルが出ていた。

 前年の11月23日に幕を開け、1月9日までの予定を2月6日まで延長している(ぎりぎり間に合ったわけだ)。
 なお、2007年のブロードウェイ入りが計画され、キャストも発表されたが、最終的にキャンセルになっている。
 

 『Forbidden Broadway: Special Victims Unit』(2月6日19:30@Douglas Fairbanks Theatre)は、オフでロングランを続けていた、おなじみのパロディ・ショウの「特別犠牲者編」と銘打った最新版

<新たなネタをたっぷり仕込んで新鮮。が、微妙に盛り上がりに欠ける気がしたのは、“スーパーボウル・サンデー”の不入りのせいだけでなく、ブロードウェイの不調が反映しているのかもしれない。>

 というのが観劇当時の感想だが、“新たなネタ”は記憶の彼方(笑)。なので、出演者だけ書いておきます。
 ロン・ボーマー、ミーガン・ルウィス、ジェイソン・ミルズ、ジェニファー・シマード(『The Thing About Men』『I Love You, You’re Perfect, Now Change』)。

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