The Chronicle of Broadway and me #493(Tapeire/The Glorious Ones)

2007年11月@ニューヨーク(その6)

 『Tapeire』(11月25日12:00@New Victory Theater 209 W. 42nd St.)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<タイトルは、タップ+アイルランド(のゲール語の綴り「Éire」)による造語。アイルランドのタップ・ダンサー、ジェイムズ・ディヴァインと彼のバンドによるショウだ。
 ショウと言っても、タップの本質であるジャム・セッション色が強く、子供向け劇場の演目としては、やや高度か。アイルランド人らしく、『Riverdance』で知られる伝統的ケルティック・ダンスの素養があるのもユニーク。
 小型カメラを駆使したりして視覚的な工夫もあり、飽きずに楽しめた。>

 プログラムによれば、原案・演出・振付も担当しているジェイムズ・ディヴァインは、世界一速くタップを踏めるダンサーのギネス記録を持っているらしい(2007年時点)。1分間に38タップだそう。
 「子供向け劇場の演目としては、やや高度か」という見解は取り消します。子供の感性はもっと柔軟かも。
 

 『The Glorious Ones』(11月25日19:00@Mitzi E. Newhouse Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<スティーヴン・フラハーティ(作曲)、リン・アーレンズ(脚本・作詞)、グラシエラ・ダニエル(演出・振付)という『Once On This Island』のトリオによる新作なだけに期待していたのが、この『The Glorious Ones』
 16世紀中頃にイタリアで形を整えたとされる即興喜劇コメディア・デッラルテの伝統に則っているというコメディ。ってことで最近復活した『The Fantasticks』とテイストが似ているのだが、こちらは設定も16世紀頃のイタリア。
 ドタバタとテンポよく展開していくが、この作者たちの作品にしては迫ってくるものがなく、やや残念な仕上がり。>

 原作はアメリカの現役小説家フランシーン・プローズの同名小説。
 この作品に関しては、こちらの理解不足なんじゃないかという気が当時からしていたが、オリジナル・キャスト・アルバムを改めて聴いていると、ますますそう思えてきた(苦笑)。
 とにかく、音だけ聴いていても「迫ってくるものが」ある。「Comedy, It’s a comedy」と歌いながら、悲しみを押し隠して笑い飛ばそうとしてみせる役者達。それに寄り添う、「伝統に則っ」りながらも新たな感触も含んだ”滋味豊かなメロディと音像。素晴らしい。
 劇中劇中劇的な展開も含め、内実がわかっていなかったのかも。
 まあ、実際の舞台との落差はあったのかもしれないが、こちらの体調も含め、観逃したことが多すぎる気がする。その時代に戻って観直してみたい作品のひとつ。

 出演は、マーク・クディッシュ(『High Society』『Bells Are Ringing』『Thoroughly Modern Millie』『A Little Night Music』『No Strings』『The Thing About Men』『Assassins』『Chitty Chitty Bang Bang』『See What I Wanna See』『The Apple Tree』)、ナタリー・ヴェネティア・ベルコン(『Avenue Q』)、エリン・デイヴィー(『Grey Gardens』)、デイヴィッド・パトリック・ケリー、そして、ジュリアナ・ソエリスティオ。ソエリスティオはインドネシア出身の人で、1998年のデイヴィッド・ヘンリー・ホワンの書いたブロードウェイ・プレイ『Golden Child』でトニー賞助演女優賞の候補になっている。