The Chronicle of Broadway and me #698(The Last Smoker In America)

2012年7月@ニューヨーク(その3)

 『The Last Smoker In America』(7月26日20:00@Westside Theatre(Upstairs))は2009年のNYMF参加作品だったらしい。

 嫌煙思想が行くところまで行っている近未来ディストピア的アメリカを舞台に、平穏に見える“普通の人々”がいかに抑圧されているかを描く。それも面白おかしく。……といった皮肉なミュージカル・コメディ。

 主人公は郊外の中流白人家庭の主婦パム。ロック・スターになる夢が捨てられず地下室で轟音ギターを弾いてばかりの夫、ゲームとラップ・ミュージックに夢中で自分を黒人のギャングスターだと思い込んでる息子、熱心なキリスト教信者でパムたちを正しい道に導こうとする隣人女性に囲まれて、今日もストレスいっぱい。どうしても煙草が止められない。
 ビル・ラッセル(『Side Show』『Pageant』)の書いた脚本は、アイディア一発の設定だけれども、キャラクターの描かれ方は面白い。
 が、それよりも、この作品の肝は、そのラッセル(作詞)とピーター・メルニック(作曲)による楽曲のコミカルでパロディ的な内容にある。とにかく、へヴィ・メタルからラップ/ヒップホップ、ゴスペルまで、様々な趣向の楽曲がショウケースのように次々に登場し、音楽的引用も豊富。ただし、傑出した1曲はない。
 幕間なしの1幕もの。

 演出アンディ・サンドバーグ。振付A・C・シウラ。

 パム役ファラ・アルヴィン(『Saturday Night Fever』『The Look Of Love』)、隣人役ナタリー・ヴェネティア・ベルコン(『Avenue Q』『The Glorious Ones』)、夫役ジョン・ボルトン(『Titanic』『Curtains』)、息子役ジェイク・ボイド(『Carrie』)。

 

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