The Chronicle of Broadway and me #248(Notre Dame De Paris/La Cava/Les Miserables[L]/The Pirates Of Penzance/Ridgeway’s Late Joys/Pageant/The Witches Of Eastwick)

2000年8~9月@ロンドン(その4)

 このロンドン行きは、ほとんど感想を残していない。残り7作について、ここでデータ的なことを中心に、かすかな記憶をたどりつつ、まとめて書き留めておきます。

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 『Notre Dame De Paris』(8月29日19:45@Dominion Theatre)は、アニメーション映画から後に舞台ミュージカル化されるディスニーの『The Hunchback Of Notre Dame』と同じ題材で、ヴィクトル・ユーゴーの小説が原作。1998年フランスで初演。その後、フランス国内ツアー→アメリカ国内ツアー→カナダ公演を経て、この年にロンドンにたどり着いたようだ。
 印象をひと言で言えば、アスレティック・ミュージカル。……と書いて、そう言えば日本に「マッスルミュージカル」なる出し物があったな、と思い出した。あれ、なぜ「ミュージカル」と名付ける必要があったのか。その辺に日本のミュージカルに対する微妙な空気感があるような……なんてことは、さておいて、こちらはミュージカルはミュージカル。ではあるが、ここまでスペクタクルにする必要があるのかどうか。過剰であることは必ずしもプラスに働くとは言えないだろう。
 天井から吊るされた揺れる巨大な鐘に人が取り付き、舞台奥の垂直な壁面を人が駆け巡る(大元がフランス産であってみれば、1995年にフランスでプレヴューを行なったデ・ラ・ガルダのフライング・パフォーマンス『Villa Villa』の影響を受けていたとしても不思議はない)。
 加えて、類型的なキャラクターに“ロック・オペラ”的な楽曲と歌唱。
 来日公演もあったようだから、ご覧になった方もいらっしゃると思うが、どんな感想を持たれたか。派手な演出が悪いとは言わない。が、例えばMET(メトロポリタン・オペラ)にも驚くほどスペクタクルな作品があるが、そこには、そうであるべき演劇的・音楽的な必然性が見出せる。だから、観ていても「過剰」とは感じない。この作品は、あまりにも“見世物”めいていて、少なからずうんざりさせられた。
 作曲リシャール・コチャンテ(リッカルド・コッチャンテ)、作詞・脚本リュック・プラモンドン、英訳詞ウィル・ジェニングズ。演出ジル・マウ。

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 『La Cava』(8月30日15:00@Piccadilly Theatre)は、作曲ローレンス・オキーフ&スティーヴン・キーリング、作詞ジョン・クラフリン&ローレンス・オキーフ、脚本ダナ・ブロッコリという顔ぶれによるミュージカル。ローレンス・オキーフは後に細君ネル・ベンジャミンと共に『Legally Blonde』の楽曲を書く人。これら主要スタッフはアメリカ人。最初は1995年にUCLAで『Florinda』(ヒロインの名)のタイトルで上演されたらしい。
 8世紀初頭、ゴート族の支配下にあり、ムーア人に侵略される直前のスペイン。将軍の娘、ムーア人の恋人、妻の不貞に傷つく国王、その妻、といった人々が、しんねりむっつりの恋愛ドラマを繰り広げる。てな話だったようだ(記憶は曖昧)。個人的に「しんねりむっつり」が好みでないこともあるが、場面的にも音楽的にも見どころが少なかった、という印象が残っている。

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 『Les Miserables』(8月30日19:30@Palace Theatre)は、ロンドン版の初観劇。とりあえず主要キャストを列記しておきます。
 ジャン・ヴァルジャン→サイモン・ボウマン、ジャヴェール→ピーター・コリー、エポニーヌ→ジョアンナ・アンピル、ファンティーヌ→レベッカ・ソーンヒル、コゼット→ゾー・カーレット、マリウス→ニコラス・アンダーソン、エンジョアラス→ジェイソン・マッキャン、テナルディエ→バリー・ジェイムズ、テナルディエ夫人→マンディ・ホリデイ。
 だいたい出揃ってますでしょうか。いやあ、「テルナディエ」とか書きそうになるぐらい、この作品については詳しくないというか関心が薄いというか。ファンの方ごめんなさい、な感じです(笑)。

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 『The Pirates Of Penzance』(8月31日14:30@Open Air Theatre)は、ウィリアム・S・ギルバート(作詞・脚本)&アーサー・サリヴァン(作曲)によるオペレッタの代表作のひとつ。1994年にニューヨークで観ているが、楽しい作品。詳しくはそちらの感想で。
 このロンドン版は、屋外劇場な分、より開放的で、のんびりした気分の仕上がりだった記憶がある。パブリック・シアターがセントラル・パークで無料開催する夏の風物詩ニューヨーク・シェイクスピア・フェスティヴァルのヴァージョン(演出ウィルフォード・リーチ、振付グラシエラ・ダニエル)を元にした舞台だったようで、ここでの演出はイアン・タルボット、振付はギリアン・グレゴリー。

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 『Ridgeway’s Late Joys』(8月31日20:15@Players’ Theatre)は、ミュージック・ホール芸の再現。と言うか、おそらく、そうした芸人のサーキットが(20年後の今はわからないが少なくとも当時は)存在していて、彼らがイギリス国内やオーストラリアの専門劇場を回っていたのではないだろうか。日本で言えば、寄席の感じですね。
 ちょうど井野瀬久美惠著「大英帝国はミュージック・ホールから」を読んだばかりだったこともあって、わざわざ探して観に行ったのだったと思う。
 同書の「あとがき」にあるように、入口で渡されるプログラムにリフレイン部分の歌詞カードが挟んであって、観客はそこを一緒に歌うのだが、みんな慣れていて驚いた。ほとんど歌詞カードを見ていない。観客には若い層もいて、それも意外。もっとも観客の数は全体に少ないのだが。
 なお、『Ridgeway’s Late Joys』というタイトルは、第二次大戦勃発直前にロンドンでリヴァイヴァル・ヒットしたというミュージック・ホール時代の作品と同じだが、内容まで近しいのかどうかは不明。

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 『Pageant』(9月1日20:30@Vaudeville Theatre)には、サブタイトル的に「The Musical Comedy Beauty Contest!」という文言が付いている。全米各地から集まった“ミス・〇〇(地域名)”が美を競うコンテスト、という設定。ニューヨークのクラブ、ブルー・エンジェルで1991年に上演されたという記録がある。というわけで、これも主要スタッフはアメリカ人。作曲アルバート・エヴァンズ、作詞・脚本・演出ビル・ラッセル、脚本・作詞フランク・ケリー。
 “ミス・〇〇”が全員ドラァグ・クイーンで、最近の例で言えば『Six』のように、自慢×ディスり合戦になる。それを捌く司会者の手腕が見せどころ。そんな内容だったと思う。ニューヨークではオフでしか上演されないタイプの、わちゃわちゃした作品。
 2014年にオフでリヴァイヴァル上演されたようだが、観ていない。

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 『The Witches Of Eastwick』(9月2日19:45@Drury Lane Theatre Royal)は、同名映画(邦題『イーストウィックの魔女たち』)の舞台ミュージカル化。原作はジョン・アップダイクの小説。キャメロン・マッキントッシュのプロデュースによる、イリュージョンや宙乗りなどの仕掛けにも凝った“大作”だったと思うが、退屈だった。後に日本でも翻訳上演されているが未見。
 作曲ダナ・P・ロウ、作詞・脚本ジョン・デンプシー、演出エリック・シェイファー。主要キャストは、イアン・マクシェイン、ルーシー・アーナズ(ルシル・ボールの娘)、マリア・フリードマン、ジョアンナ・ライディング。

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