The Chronicle of Broadway and me #762(Rocky)

2014年2月~3月@ニューヨーク(その4)

 『Rocky』2月26日20:00@Winter Garden Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ある意味、もう1つの『Spider-Man: Turn Off The Dark』だった。これほど大掛かりな“特殊効果”で見せる舞台だったとは意外。
 あ、ちなみに、元になっているのは、あのシルヴェスター・スタローンの映画版です。念のため(笑)。

 具体的に言っても『Spider-Man: Turn Off The Dark』に似ているところがあって、それは、ロッキーのトレーニング・シーン。多人数の主人公が同時に舞台上に出現するのは、まさに同趣向。映像も多用されて、なんだかせわしない。
 おまけに、バックには映画同様「Eye Of The Tiger」が流れるし。もちろん、ロッキーのテーマとして知られる「Gonna Fly Now」も流れて、映画同様に大階段を上り詰める(そこで客席は大沸き)。まあ、節操がない。
 楽曲がスティーヴン・フラハーティ(作曲)+リン・アーレンズ(作詞)のコンビ(『Ragtime』)だし、昨年9月に観た彼らの楽曲を複数の歌手が歌うライヴ(作者2人も登場)で『Rocky』用の楽曲も聴いていたので、そこそこ期待していたのだが、――でもって実際、彼らの楽曲は悪くないのだが――、これではオリジナル楽曲を書いた苦労も台無しだ。

 で、第2幕には、さらに驚くべき事態が待っている。上演半ば、いよいよ試合が始まるという時に、リング・アナウンサーの呼び出しに応じるように、オーケストラ席センター前方の観客がスタッフに誘導されて舞台奥に設置されたリングサイド席に移動する。何だ?何だ? と思っていると、別のスタッフが客席後方の通路に積んであった(幕間に見て「プレヴュー中で装置の片付けが終わっていないのか」と思った)骨組みを、観客のいなくなった前方座席の上に組み立て始める。と同時に、舞台上のボクシングのリングが客席側に迫り出してくる。しかも、これが回転する!
 まあ、観たのがプレヴューが始まって2週目ぐらい。正式オープンは、それから2週間ちょい経ってからだったので、リング設置時の、あの“あたふた感”は解消されたかもしれない。が、それにしても、だ。行き過ぎ、と言わざるを得ない。

 芝居の中身は映画同様、地味なラヴ・ストーリーで、そちらはそれなりにしみじみしているのだが、こうなると、その行方とかどうでもよくなる。
 もっとも、主人公(アンディ・カール)の演技が映画版の模倣にしか見えない、という欠点もあり、それはスタローン本人がプロデュースと脚本に参加しているせいかとも思う。て言うか、全てがスタローンの意向なのかも。
 とすれば、演出のアレックス・ティンバーズ(『Bloody Bloody Andrew Jackson』『Peter And The Starcatcher』)も如何ともしがたかったか。
 というわけで、あまりオススメはしません。>

 「多人数の主人公が同時に舞台上に出現する」というのは、主人公そっくりに見える“影武者”的役者が複数現れる、ということ。

 シルヴェスター・スタローンと共に脚本を書いたのはトーマス・ミーハン(『Annie』『The Producers』『Hairspray』『Bombay Dreams』『Young Frankenstein』『Cry-Baby: The Musical』『Elf』『Chaplin』)。

 出演はアンディ・カール(『Legally Blonde: The Musical』『9 To 5』『The Mystery Of Edwin Drood』)の他に、エイドリアン役マーゴ・サイバート(ブロードウェイ・デビュー)、アポロ役テレンス・アーチー(『Ragtime』)。

 ブロードウェイに来る前にドイツのハンブルクで『Rocky: Das Musica』のタイトルで世界初演され(2012年)、英語版ウィキペディアによれば、そちらは好評だったらしい。

The Chronicle of Broadway and me #762(Rocky)” への28件のフィードバック

コメントを残す