The Chronicle of Broadway and me #819(The Curious Incident Of The Dog In The Night-Time)

2015年5月~6月@ニューヨーク(その2)

 『The Curious Incident Of The Dog In The Night-Time』(6月3日14:00@Ethel Barrymore Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ロンドンのナショナル・シアターから来た『The Curious Incident Of The Dog In The Night-Time』は面白い作品だった。
 脚本サイモン・スティーヴンス。原作マーク・ハッドン(翻訳邦題:夜中に犬に起こった奇妙な事件)。演出マリアンヌ・エリオット。

 15歳の少年クリストファーは数学に関する天才だが、日常的な対人関係に難がある。しかも、両親は別居していて、共に暮らす父親は、愛情は抱きながらも対処の仕方がわからない。そんな中、隣人の飼い犬が殺され、その嫌疑がクリストファーにかかる。それをきっかけに、少年は行動し始め……。
 結果的には、少年が、両親も含め周りの世界とある程度コンタクトし、それなりの理解も得る、という話。

 おそらく極めて数学的な主人公の頭の中を象徴させたのだろう、三方の壁と床が方眼状にデザインされていて、それぞれの方眼に別の映像を映し出すことができるし、一部の方眼はロッカーのように引き出すこともできる。その機能を駆使して、閉じられた舞台空間を様々に変化させ、主人公の心の動きを表すと共に、空間的な移動も表していく。それらにシンクロして音像も目まぐるしく動く(装置・衣装バニー・クリスティ、照明パウル・コンステイブル、映像フィン・ロス、音響イアン・ディキンソン、音楽エイドリアン・サットン)。
 劇場全体が少年の脳内に飲み込まれる印象だ。

 ちなみに、トニー賞の候補となった振付は、時折ストレート・プレイのクレジットで見かける「movement」と呼ばれるスタイルのもので、役者たちの動きが連動して踊っているかのごとき印象になる。それはそれで見事だったが、ことさら振付でトニー賞候補にしなくても……とは思った。>

 その振付にクレジットされているのは、スコット・グレアム、スティーヴン・ホゲット、フランティック・アセンブリーの3人。
 ホゲットは『American Idiot』Once『Peter And The Starcatcher』『Rocky』『The Last Ship』等を手がけてきていて、近年の『Harry Potter And The Cursed Child』『A Beautiful Noise: The Neil Diamond Musical』も彼の仕事。

 結果的に振付賞は逃すが、2014/2015シーズンのトニー賞で、プレイの作品賞、演出賞、装置デザイン賞、照明デザイン賞、主演男優賞を獲る。

 クリストファー役はWキャストだったが、観た回はロンドンからやって来たアレックス・シャープで、トニーを獲ったのは彼。
 父親役イラン・バーフォードは『The Rise And Fall Of Little Voice』に出ていた人。

 上掲感想に「両親は別居していて」と書いているが、クリストファーは母が亡くなったと父から聞かされている、という設定だった。

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