The Chronicle of Broadway and me #712(The Mystery Of Edwin Drood)

2012年11月@ニューヨーク(その4)

 『The Mystery Of Edwin Drood』(11月21日20:00@Studio 54)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

『The Mystery Of Edwin Drood』は、音楽好きにはルパート・ホルムズが楽曲を(ちなみに脚本と編曲も)書いたミュージカルとして知られている(はず)。初演は1985年暮れにオープンして1年半ほどのロングラン。それ以来のブロードウェイでのリヴァイヴァル。

 原作は、チャールズ・ディケンズ晩年の同名小説で、未完のため作中の殺人事件の真相が不明のまま。まさにミステリーなわけだが、そこを逆手にとって、この舞台版は、毎公演結末を変えるという趣向に出た。
 具体的には、結末の前に客席に向って「誰を犯人にしたいか」を問う。決め手は拍手の多さ。ここで生きてくるのが、作品全体をミュージック・ホールの演目とした設定。出てくる役者たちは、幕開きから、本筋と関係なく自分の人気取りに走る。それもこれも、ここで“おいしい”犯人役を射止めるためなのだ。
 こうした入れ子構造(しかもイギリスの大衆芸能色濃厚)が、原作の諧謔性をコミカルに色づける。で、観客の目は、もっぱら、役者の“芸”合戦に注がれる仕組みになっている。そこが、この舞台の楽しさ。
 芸を競い合うのは、ウィル・チェイス、ステファニー・J・ブロック、グレッグ・エデルマン、ジム・ノートン、そしてチタ・リヴェラといった面々。永遠のダンサー、チタは、アンサンブルと共に“悪夢のダンス”を見事に踊る。>

 出演は他に、アンディ・カール、ジェシー・ミューラー、ベッツィ・ウルフ、ニコラス・バラシュ、ピーター・ベンソン、ロバート・クレイトン。
 ちなみに、チタ・リヴェラ、この時79歳!

 このリヴァイヴァル版演出のスコット・エリスは、演出家としてのブロードウェイ・デビューとなった1993年リヴァイヴァル『She Loves Me』以来、同作の製作母体だった非営利組織ラウンダバウトと縁が深く、1990年代終盤からは同組織の芸術監督的立場になっている。振付は、2000年代後半以降今日まで売れっ子のウォーレン・カーライル。

 驚いたことに、こんな英米演劇文化のシャレで埋め尽くされたようなミュージカルも、後に翻訳上演された。

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