The Chronicle of Broadway and me #792(Found/Can-Can)

2014年10月@ニューヨーク(その5)

 『Found』(10月8日14:00@Linda Gross Theater)は、デイヴィ・ロスバートの創刊した雑誌「ファウンド」に寄せられた様々な“書き置き”を元に作られたミュージカル。
 “書き置き”というのは、ロスバートが「ファウンド」誌を創刊するきっかけとなった例で言えば、彼のクルマのワイパーに挟まれていた「こんな所に駐車しやがって、このクソ野郎」的な(笑)走り書きのある紙切れ。そんな風な、誰が書いたかわからない伝言やメモやポストイット等を募集してまとめたのが雑誌「ファウンド」。
 それらの“書き置き”から想像を膨らませて作られた複数のエピソードから成るのが、このミュージカルというわけだ。かくして、アメリカの日常が少しばかり奇妙な視点から描かれる。

 作曲・作詞エリ・ボーリン(プレイビルの作詞のクレジットが「Original Lyrics」とあるのは「ファウンド」誌に載った“書き置き”を元にして新たに書き起こした、という意味だろう)。脚本ハンター・ベル&リー・オーヴァートゥリー。
 演出リー・オーヴァートゥリー。振付モリカ・ビル・バーンズ。

 『Can-Can』(10月9日13:30@Paper Mill Playhouse)は、1953年初演のコール・ポーター(作曲・作詞)によるブロードウェイ・ミュージカル。脚本・演出はエイブ・バローズ。マイケル・キッドの振付でグウェン・ヴァードンが出演していて、2年強のロングランを記録している。劇中、最も有名な楽曲は「I Love Paris」。
 ブロードウェイでは1981年に1度だけリヴァイヴァルしているが、プレヴュー16回、本公演5回で幕を下ろしている。

 このペイパー・ミル・プレイハウス版は、ジョエル・フィールズ&デイヴィッド・リーが改訂している。が、元を知らないので、どこをどう改訂したのかはわからないままだが、楽しく観た(苦笑)。
 ちなみに、演出デイヴィッド・リー、振付パティ・コロンボ(『Peter Pan』『Seven Brides For Seven Brothers』@N.J.『Peter Pan』@N.J.)。 

 主人公の1人、「I Love Paris」を歌うモンマルトルのダンス・ホールの女主人ラ・モム・ピスタッシュ役がケイト・ボールドウィン(『Finian’s Rainbow』『Big Fish』)。もう1人の主人公で彼女と恋に落ちる若き判事アリスティード・フォレスティエ役がジェイソン・ダニエリー(『Candide』『The Full Monty』『Curtains』)、ダンス・ホールの後援者がマイケル・ベレッセ(『Fiddler On The Roof』『Damn Yankees』『Chicago』『The Gershwins’ Fascinating Rhythm』『Kiss Me, Kate』『The Light In The Piazza』『The Cher Show』)。初演でグエン・ヴァードンの演じていたクロディーヌ役はミーガン・シコラ(『42nd Street』『Thoroughly Modern Millie』『Wonderful Town』Dracula, The Musical』『Curtains』『Promises, Promises』『How To Succeed In Business Without Really Trying』)。

 余談ですが、ブロードウェイ初演でダンス・ホールの女主人役を演じたリロ(Lilo)は今年(2022年)の9月26日に101歳で亡くなっている。