The Chronicle of Broadway and me #864(How To Be An American/Fiorello!)

2016年9月@ニューヨーク(その3)

 オフで上演された政治家の登場するミュージカル2本をまとめて。
 

 『How To Be An American』(9月22日14:30@Theatre at St. Peter’s)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

『How To Be An American』と次の『Fiorello!』が政治家ネタなのは、時代が要請する、ある種のシンクロニシティか。しかも、それぞれの中心人物の動きが、時代こそズレているが敵対し合う関係にあった、というオマケも付いている。

 『How To Be An American』の主人公はジョージ・ワシントン・プランキットという政治家。ご存知だろうか。19世紀後半のニューヨーク州の政治家で、土地ころがしで儲けたような、ちょっと胡散臭いところもある人物のよう。
 その“もう1人の”ジョージ・ワシントンが、移民たちに向かって、どうすればアメリカ人になれるかを説く演説会を催している、という設定。
 移民居住地区を票田としたタマニー・ホール(Tammany Hall)と称する票固め組織の勃興期のようだ。そこに反対勢力が押しかけたり、というドラマもあり、どこかトランプ騒ぎを思わせないでもない。根底のところで変わらないアメリカの本質を見る気分。

 ともあれ、ミュージカルとしては、ジョージ・M・コーハンの「Yankee Doodle Dandy」他、20世紀初頭を中心にした、当時の、ある種のキャンペーン・ソングが使われているのが面白いところ。
 全体に作りが若干緩いが、興味深く観た。>

 そんなわけで楽曲は、古くは1814年「Star Spangled Banner」(フランシス・スコット・キー)から一番新しい1942年の「Yankee Doodle Dandy」まで、全て既成曲。
 脚本はT・キャット・フォードだが、基本、タマニー・ホールでのプランキットの演説集のようなものをアレンジして仕上げてあるようだ。
 演出ビル・キャステリーノ。

 ジョージ・ワシントン・プランキットを演じていたのはD・C・アンダーソン。
 


 『Fiorello!』(9月22日19:00@East 13th Street Theater)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

『Fiorello!』の主人公は、今も空港にその名を残す、かつてのニューヨーク市長フィオレロ・ヘンリー・ラ・ガーディア。
 初演は1959年秋から約2年間ブロードウェイでロングランしている。作曲ジェリー・ボック、作詞シェルドン・ハーニック、脚本ジェローム・ワイドマン&ジョージ・アボット。

 フィオレロは大恐慌後から第二次世界大戦終了後まで市長を務め、前述のタマニー・ホール一派の不正を糺すなどして市政を改革し、ニューヨーク市のインフラの整備に努めたと言われている。
 エネルギッシュでカリスマ性のある人物として描かれるが、政治家としては毀誉褒貶相半ばするようで、前半は順風満帆、後半は疲弊していく。

 主人公を演じたオースティン・スコット・ロンバルディが、カリスマと言うにはやや魅力に乏しく、その分、舞台全体が膨らみに欠けた。>

 演出ボブ・モス。振付マイケル・キャラハン。

The Chronicle of Broadway and me #864(How To Be An American/Fiorello!)” への1件のフィードバック

コメントを残す