The Chronicle of Broadway and me #508(A Catered Affair)

2008年4月@ニューヨーク(その6)

 『A Catered Affair』(4月4日20:00@Walter Kerr Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<“結婚式騒動”とでも訳すべき『A Catered Affair』のネタ元は、1955年の同名TVドラマと、タイトルの冠詞を「the」に変えての翌年の映画化作品。脚色を手がけたのは『Hairspray』のママ役でおなじみのハーヴェイ・ファイアスタインで、重要な役で出演もしている。
 ブロンクスで慎ましく暮らす家族間の、娘の結婚式を巡って浮かび上がる思わぬ軋轢という話の渋さ、母親役フェイス・プリンス、父親役トム・ウォパット、娘役レズリー・クリッツァー、それにファイアスタインらの濃密な演技のやりとり、等、全体の感触は『Grey Gardens』に近いかも。
 1953年のメモリアル・デイ(戦没将兵追悼記念日)という設定の意味が「アッ!」とわかる瞬間があり、そこから作品が強烈な今日性を持ち始める。
 ヒットはしないだろうから、早めに観ておきたい。>

 時の設定は、正確には、1953年のメモリアル・デイ(5月の最終月曜日)の翌朝とそれ以降、となっている。プリンスとウォパットの2人がワシントンD.C.から帰って来る。それがメモリアル・デイの翌朝。彼らは朝鮮戦争で亡くなった息子の弔いに行ってきたのだ(朝鮮戦争は同年7月に終わる)。
 「強烈な今日性」と上記感想に書いているのは、単に50年代を懐かしんで舞台化されたわけではない、と感じたからだろう。未見だが、調べた限りでは、映画には、この息子の戦死は出てこないように見受けられる。息子の突然の死は、娘の結婚を大切に考えたい母親の気持ちに影響してもいる(母親の歌う「Our Only Daughter」というナンバーの「Only」は、その表れだろう)。さらに言うと、息子の戦死に対して政府から支払われた給付金の遣い道もドラマに関わってくる。
 もう1つ舞台独自の設定だと思われるのが、ファイアスタイン演じるプリンスの兄役がゲイであること。これに関しては、映画の脚本を書いたゴア・ヴィダルの意を汲んでファイアスタインが隠された(と考えた)設定を明らかにしてみせた、という可能性はある。ちなみに、映画で同役を演じたバリー・フィッツジェラルドは生涯独身だった。
 いずれにしても、1950年代半ばに生きた庶民のなにげない家庭劇を、今日的に深めて仕立て直した感触があった。

 ジョン・ブッキーノの楽曲は、派手さはないが、作品に寄り添って情感豊か。
 演出は、リヴァイヴァルの『Sweeney Todd』『Company』で役者に楽器を演奏させて話題を呼んだジョン・ドイル。

 レズリー・クリッツァー(『Legally Blonde: The Musical』『The Great American Trailer Park』)は、この作品からスター格になった。
 彼女の婚約者役はマット・キャヴェノー(『Urban Cowboy: The Musical』『Grey Gardens』)。

 この渡米時に『Dancing In The Dark』を観に行ったサンディエゴのオールド・グローブ劇場で前年秋にプレミア上演。
 ブロードウェイでは、3月25日プレヴュー開始、4月17日正式オープンの後、7月27日にクローズしている。

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