The Chronicle of Broadway and me #507(Gypsy[2])

2008年4月@ニューヨーク(その5)

 『Gypsy』(4月3日20:00@St. James Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<昨年7月にシティ・センターで観たパティ・ルポン版『Gypsy』が、ほぼ、そのまんまの形でブロードウェイ入り。もちろん、ルイーズ(シプシー・ローズ・リー)役のローラ・ベナンティも一緒。
 『Gypsy』は、歌舞伎で言えば十八番。時代を超えて再演に耐えうる演目だが、ある種の冷徹さを感じさせた2003年のサム・メンデス演出版の後に、同作品の脚本家、老アーサー・ローレンツが、おそらく生涯最後となるであろう演出を、もう1度手がけたあたりに、なにがしかの意図を感じる。
 ママ・ローズが1人残る幕切れが印象的。>

 まず訂正しておくと、「歌舞伎で言えば十八番」という認識が間違っている(笑)。「歌舞伎で言えば」という前置きを付けるなら、それは「特定の役者が得意とする芸」を指す。なので、「エセル・マーマンの十八番」という表現なら筋が通るが、ここでの言い回しは間違っている。という訳で、「歌舞伎で言えば十八番」の部分を抜かして読んでください(苦笑)。

 アーサー・ローレンツは、リン=マニュエル・ミランダに翻訳を依頼してスペイン語を強調した翌年の『West Side Story』の演出をブロードウェイ最後の仕事にして、2011年に亡くなる。

 シティ・センター版の感想にも書いたが、役者は、パティ・ルポン、ローラ・ベナンティに加え、ハーヴィー役のボイド・ゲインズもトニー賞を受賞する。だからという訳ではないが、その3人に「All I Need Is the Girl」を歌い踊るタルサ役でトニー・ヤズベクの加わった、このヴァージョンが、役者の組み合わせとしては、1989年版、2003年版と観てきた中では個人的にはベスト。
 この時点で、ルポン58歳、ベナンティ28歳、ゲインズ54歳、ヤズベク28歳。役柄の設定年齢とは別に(そもそも全体を通して10年ぐらいの時が経つ話だし)、各人の役者としての成熟度やバランスも、いい塩梅だったのかも。
 オリジナル・キャスト盤を聴き直すと、ルポンの充実度が際立ち、ここぞというタイミングでの待望の役だったことがわかる。
 なお、このオリジナル・キャスト盤には、ブロードウェイ初演に到るまでにカットされたナンバー(ズ)が、この2008年版キャストの歌唱によって収録されている。

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