The Chronicle of Broadway and me #417(The Great American Trailer Park)

2005年9月@ニューヨーク(その4)

『The Great American Trailer Park』(9月22日14:00@Dodger Stages(Stage 1))について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<昨年の「NYMF」参加作品。1年を経て、こうしてオフのロングランに移ったわけだ。
 フロリダの、トレイラー・ハウスを連ねた簡易モーテルに住まう、心に闇を抱えた人たちの、見ようによっては陰惨な人生を、サザン・ロックと呼びたくなるカントリー+リズム・アンド・ブルーズの楽曲に乗せてコミカルに描く快作。
 芸達者が揃った。>

 改めてキャスト・アルバムを聴くと、デイヴィッド・ネールズ(作曲・作詞)の楽曲は、わざわざサザン・ロックと呼ぶほど泥臭くはないが、下世話な感じがしてイキがいい。カントリー・バラードやディスコ風など曲調に幅もある。
 それより特徴的なのは、随所に現れる二声/三声の、ゴスペルっぽく、時にジャジーな女性コーラス。これをサザン・ロック風と感じたのかも。

 そのコーラスを担当しているのが、リンダ・ハート、マーヤ・グランディ、レズリー・クリッツァーの3人。トレイラー・ハウスの前にデッキチェアを並べて日光浴している噂好きな彼女たちは、観客に話しかける狂言回しの役割も兼ねている。要するに、作劇的にはギリシア劇のコロスですね。『Little Shop Of Horrors』の女性コーラス3人組に近い存在。
 初渡米の際の『Anything Goes』で出会ったリンダ・ハートは、少し前に『Hairspray』でブロードウェイに戻ってきたばかり。マーヤ・グランディは、ブロードウェイ出演こそリヴァイヴァル版『Les Miserables』のみだが、オフや地方公演では硬軟自在に演じているようで、世間的にはTVの『Law & Order』で知られている人だとか。レズリー・クリッツァーは、この作品以降、『Legally Blonde』『A Catered Affair』『Sondheim On Sondheim』『Elf』『Beetlejuice』と立て続けにブロードウェイ・ミュージカルにオリジナル・キャストとして出演していくことになる。
 そこに、新参の妖艶なストリッパーを演じるオーフェ(『The Gershwins’ Fascinating Rhythm』『Legally Blonde』『Pretty Woman』)、精神疾患でトレイラーから表に出られなくなっている主婦役のケイトリン・ホプキンズ(『Dr. Seuss’ How The Grinch Stole Christmas!』)が加わって、この女性陣5人がとにかく強力。
 それに絡むのが、低音が魅力的なシュラー・ヘンズリー(2002年版『Oklahoma!』のジャド役)と、やさぐれたウェイン・ウィルコックス(『A Man Of No Importance』)。
 ウィルコックスはブロードウェイに来る前のシカゴでの『The Light In The Piazza』に、ブロードウェイ版でマシュー・モリソンが演じたイタリア人青年役で出ていたらしい。てことは、そのままブロードウェイ版に出ていたら、こちらには出なかったわけだ。人生の綾。

 脚本・演出のベッツィー・ケルソーは女性だけのコメディ・グループ「シャーリー・チキンパンツ」の創設メンバー。楽曲作者のデイヴィッド・ネールズとは『The Rocky Horror Show』のヨーロッパ・ツアーで出会ったそう。うなずける話。
 振付のセルジオ・トゥルヒオは、この年『Jersey Boys』でブレイクする。

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