★2017年2月~3月@ニューヨーク(その5)
オフの新作を観た順に。
『The Outer Space』(3月1日19:00@Joe’s Pub/Public Theater)は、イーサン・リプトン率いる4人組バンド(プログラムには書かれていないが、リプトンの公式サイトによればイーサン・リプトン&ヒズ・オーケストラと名乗っている)の演奏による、事実上リプトンのソロ・ミュージカル。
地球の環境の悪化、物価の高騰などから逃れるために古いロケットを買って宇宙に逃げ出そうとする2人の人物の物語。……だと思うが、ほとんど演技のない歌による進行なので、内容はあまり把握できないままだった。
作曲はイーサン・リプトンとオーケストラのメンバーであるヴィート・ディエターレ、イーベン・リーヴァイ、イアン・リグズの4人で、作詞・脚本はリプトン。
演出リー・シルヴァーマン(『Coraline』『Violet』『Sweet Charity』)。
『Sundown, Yellow Moon』(3月2日20:00@WP Theater)は、別々に暮らす双子の姉妹が、故郷の南部の町に帰ってきて、トラブルを抱えた父親を思いやりながら、それぞれの心の内を語り合う、といった話。
しっとりした南部の夜、という空気感の中で奏でられるフォーキーな歌たち、という印象が残っている。
レイチェル・ボンズの書いた戯曲に、2人組のバンド、ザ・ベングソンズ(アブリゲイル&ショーン・ベングソン)が楽曲(作曲・作詞)を付けた形か。ボンズも詞を補作している。
演出アン・カウフマン(後に『The Bedwetter』)。
出演は、姉妹役エボニ・ブースとリリ・クーパー(『Spring Awakening』『The 3 Penny Opera』)、父親役ピーター・フリードマン(『Ragtime』『Fly By Night』)、他。
『Kid Victory』(3月3日20:00@Vineyard Theatre)は、話題のオペラ『The Hours』(邦題:めぐりあう時間たち)の台本作者グレッグ・ピアースが、同じヴィニヤード劇場で上演された『The Landing』に次いでジョン・カンダーと組んで作ったミュージカル。これも南部(カンザス)の小さな町が舞台。
17歳の時に行方不明になり1年後に帰って来た少年/青年をめぐる、不穏な空気を孕んだ物語で、家庭劇に見えるが、けっこう複雑な構造でできている。ネット社会の危うさも描く。何か解決があるわけではないところも含め、『The Hours』と通底するところがないでもない。翻訳上演もされたようだから、ご覧になった方もいらっしゃるだろう。
作曲ジョン・カンダー、作詞・脚本グレッグ・ピアース、原案カンダー&ピアース。
演出リーズル・トミー(『Party People』)。振付クリストファー・ウィンダム。
主人公役ブランドン・フリン。他に、カレン・ジエンバ(『And The World Goes ‘Round』『Crazy For You』『I Do! I Do!』『Steel Pier』『Chicago』『My Favorite Broadway』『Contact』『The Pajama Game』『Never Gonna Dance』『Guys And Dolls』@N.J.『Curtains』『Bullets Over Broadway』)、ジョエル・ブラム(『And The World Goes ‘Round』『Steel Pier』『Gemini』『101 Dalmatians』)、ジェフリー・デンマン(『How To Succeed In Business Without Really Trying』『Dream』『Irving Berlin’s White Christmas』)、ディー・ロスチオリ(『The Cher Show』)ら。
『Wonderland: Alice’s Rock And Roll Adventure』(3月4日10:30@Linda Gross Theater)はアトランティック・シアター・カンパニーによる子供向けミュージカル。同時期公演中のデイヴィッド・マメットのプレイ『The Penitent』のセットをそのまま使っての上演。窮余の策とはいえ面白い発想。
ロック・バンドの演奏とアリスの物語が合体してノリノリで繰り広げられる楽しいショウ。子供向けとはいえ、全体の水準が高いのは、ここで演じられるこの手の舞台の常。
作曲・作詞マイケル・マーラー、作詞・脚本レイチェル・ロックウェル(『Ride The Cyclone』演出・振付)。
演出マーシャル・ペイレット。振付ミーシャ・シールズ。
『The View Upstairs』(3月4日18:00@Lynn Redgrave Theater)も最近日本で翻訳上演があったかと思う。1973年6月の最終日曜日に、ニューオーリンズのゲイ・バー、アップステアーズ・ラウンジで起きた放火事件(32人が死亡、警察発表では容疑者不明のまま)を元にした作品。その日曜日は「ストーンウォールの反乱」4周年記念となるプライド・ウィークエンドの最終日だった、とプログラムに挟まれたプリントアウトに書いてある。ただし、その時はまだニューオーリンズではゲイ・プライド・パレードは行なわれていなかった、とも。
その日のアップステアーズ・ラウンジを舞台した、様々な人々の物語。
作曲・作詞・脚本は、後にヘレン・パークと共同で『Kpop』の楽曲を手がけることになるマックス・ヴァーノン。ゴスペルやソウル・ミュージック色の強い楽曲は魅力的。
演出スコット・エバーソールド。振付アル・ブラックストーン。
『Ain’t Too Proud』でエディ・ケントリックスを演じることになるジェレミー・ポープが出ていた。
ちなみに、観劇した日、開演してすぐに観客の1人が具合が悪くなり運び出されるというトラブルがあって、しばらく中断した(現実の話)。次の『Sweeney Todd』の開演に間に合わなくなったのは、その中断による終演時間遅延が原因。
“The Chronicle of Broadway and me #879(The Outer Space/Sundown, Yellow Moon/Kid Victory/Wonderland: Alice’s Rock & Roll Adventure/The View Upstairs)” への8件のフィードバック