The Chronicle of Broadway and me #772(50 Shades! The Musical/Cabaret/The 3 Penny Opera)

2014年3月@ニューヨーク(その6)

 『50 Shades! The Musical』(3月26日14:00@Elektra Theatre)は、大ヒットしたポルノ小説『The Fifty Shades Of Grey』の舞台パロディ・ミュージカル化の(個人的には)第2弾。第1弾は前年秋に観た『Cuff Me: The Fifty Shades Of Grey Musical Parody』で、その感想に、「同時期に別のパロディ版も登場した記憶がある」とかボンヤリ書いてるけど、観てるんじゃん(笑)。

 既成の楽曲を使った“第1弾”と違って、こちらの楽曲はオリジナル。作曲・作詞にクレジットされているのは、アル・サミュエルズ、アマンダ・B・デイヴィス、ダン・ウェッセルズ、ジョディ・シェルトン、アシュリー・ワードの5人で、彼らが脚本も書いている。コント集的な作り方なのだろう。
 演出はアル・サミュエルズとロブ・キンドリー。振付ミンディ・クーパー。
 出演者も“第1弾”と違って9人と、それなりの数。なのでショウ場面は派手になってはいたが、その分、“第1弾”にあった少人数ならではの奇抜さがなくなり、面白さも“普通”になっていた。
 

 『Cabaret』(3月26日20:00@Kit Kat Klub/Studio 54)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

1998年リヴァイヴァル版と同演出(サム・メンデス)のリヴァイヴァル。しかも、エムシー役はアラン・カミング(同役で当時のトニー賞主演男優賞受賞)。今回、トニー賞でリヴァイヴァル作品賞の対象にならなかったのは、そういう事情からだろうか。
 トニー賞と言えば、1998年版では、カミングの他に、主演女優賞でナターシャ・リチャードソン(サリー・ボウルズ役)が、助演男優賞でロン・リフキン(シュルツ役)が、助演女優賞でメアリー・ルイーズ・ウィルソン(シュナイダー夫人役)が、それぞれ候補になり、リチャードソンとリフキンが受賞している。
 今回も、ダニー・バースタイン(シュルツ役)とリンダ・エモンド(シュナイダー夫人役)が候補になっていて、どちらも好演。残念ながら、サリー・ボウルズ役のミシェル・ウィリアムズは候補にならなかったが、個人的にはナターシャ・リチャードソンと甲乙付けがたい出来だと思う。

 1998年版登場時の衝撃は、さすがにないが、依然観るべきところの多い舞台。来年1月4日までの限定公演(予定)だが、観るなら、お早めに。>

 最終的に公演は2015年3月29日まで延長された。
 なお、振付・共同演出も1998年版同様のロブ・マーシャル。
 

 『The 3 Penny Opera』(3月29日14:00@Linda Gross Theater)は、もちろん、作曲クルト・ヴァイル、作詞・脚本ベルトルト・ブレヒトの『Die Dreigroschenoper』をマーク・ブリッツスタインが英語訳した“あの”名作(邦題:三文オペラ)。
 この時の演出・振付はマーサ・クラーク。元々はダンスの人で、彼女の代表作(考案・演出・振付)とされるダンス作品『The Garden of Earthly Delights』の再演版を2009年に観ている。画家ボッシュの同名絵画を舞台上にダンスで表出しようというユニークなもので、面白かった。
 が、逆に言うと、視覚的な面白さにこだわる人でもあり、その辺の演出・振付の感触が、実は内に荒々しさすら秘めているように感じられる「三文オペラ」世界と、必ずしも相性がよくなかったのではないかと思う。今一つノレなかった。

 マッキース役マイケル・パーク(『Smokey Joe’s Cafe』『Little Me』『How To Succeed In Business Without Really Trying』)、ポリー・ピーチャム役ローラ・オスネス(『Grease』『Bonnie & Clyde』『Rodgers + Hammerstein’s Cinderella』)、ジェニー役サリー・マーフィ(『Carousel』『The WIld Party』『A Man Of No Importance』『FIddler On The Roof』『Bernarda Alba』)、ルーシー・ブラウン役リリ・クーパー(『Spring Awakening』)、ピーチャム役F・マレイ・アブラハム(『Triumph Of Love』)、ピーチャム夫人役メアリー・ベス・ピール(『Nine』『Sunday In The Park With George』『Women On The Verge Of A Nervous Breakdown』『Follies』『Anastasia The Musical』)、タイガー・ブラウン役リック・ホームズ(『Peter And The Starcatcher』)と、出演者は充実していた。