The Chronicle of Broadway and me #578(Fela!)

2009年11月@ニューヨーク(その3)

 『Fela!』(11月19日20:00@Eugene O’Neill Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<昨年(2008年)夏にオフで上演されていて、ソールドアウトで観逃した作品。
 主に1970年代に活躍し、“ブラック・プレジデント”(!!)と称されたナイジェリアのミュージシャン、フェラ・クティ(Fela Anikulapo Kuti)の波瀾の半生を、彼のライヴ・ステージの形で綴る。これが熱い。
 クティの音楽的評価の一例を挙げると、今年夏にミュージック・マガジン誌の40周年記念増刊として出された「アルバム・ランキング・ベスト200」(1969年~2008年に出たアルバムから選出)で、彼の代表作『Zombie』(1976年)は5位にランクイン。 ビートルズ『Abbey Road』、ニール・ヤング『After The Gold Rush』、トーキング・ヘッズ『Remain In Light』、スライ&ザ・ファミリー・ストーン『There’s A Riot Goin’ On』に次ぐ順位で、6位がローリング・ストーンズ『Let It Bleed』。
 ――と、世界的に高く評価されるクティだが、国内では政府批判ゆえに軍事政権の弾圧を受け、苦闘の活動を余儀なくされた。そんなわけで、この舞台にもヒリヒリするような焦燥感があり、不穏な空気もある。
 そんな中、バンド、ダンサーが一体になって繰り広げる、クティの生み出した“アフロビート”の躍動感を再現するパフォーマンスが素晴らしく、思わずブロードウェイの劇場にいることを忘れる。
 ジェイ・Zやウィル&ジェイダ・ピンケット・スミス夫妻が追って出資したのも話題。
 演出・振付・共同原案・共同脚本は『Spring Awakening』の振付家ビル・T・ジョーンズ。>

 ビル・T・ジョーンズと共に原案・脚本を担当したのはジム・ルウィス。原案にはプロデューサーの1人スティーヴン・ヘンデルも参加。ちなみに、ビル・T・ジョーンズは今シーズン(2021/2022)の新作『Paradise Square』の振付も手がけている。

 フェラ・クティ(1938年10月15日~1997年8月2日)の最後のコンサート(1990年代初頭を想定か)という設定。場所は、ナイジェリアのラゴスにあったクティ所有のライヴ・スポット「シュライン」。そこに回想で、ナショナリズム運動家だった母親フンミラヨ・ランサム・クティの亡くなった半年後、1978年の夏が挟み込まれる(母親の霊が登場)。
 フェラ・クティ役はサー・ンガウジャ(後に『Moulin Rouge! The Musical』)。その母はリリアス・ホワイト(『How To Succeed In Business Without Really Trying』『The Life』『Dinah Was』)。クティに影響を与えた活動家サンドラ・イザドア役セイコン・セングブロー(『Hair』)。
 バンドに神戸出身のヨシヒロ・タケマサというパーカッショニストがいたのを覚えている。