The Chronicle of Broadway and me #293(Into The Woods/Into The Woods[2])

2002年5月@ニューヨーク(その4)/★2002年7月@ニューヨーク(その5)

 『Into The Woods』(5月5日15:00@Broadhurst Theatre)については、旧サイトに載せるべく途中まで感想を書いている(笑)。付けていたタイトルは「テンポは快調、話は単調」。
 書いてあるところまで、そのまま載せてもいいんですが、途中引用している初演についての当時の感想が#007とダブったりする他、ちょっとわかりにくくなるので、編集しつつ書き足す、という感じで進めてみます。<>内が途中まで書いた分からの引用です。

<2002年版『Into The Woods』は、1987年オープンの初演版に1曲の新曲が加えられ、ストーリーも若干改変されている。書き直し、書き足したのは初演の楽曲作者スティーヴン・ソンドハイムと脚本家ジェイムズ・ラパインだから、そういう意味では、単純なリヴァイヴァルと言うよりも、改訂版、あるいは決定版と呼べるものなのかもしれない。

 初演の舞台を観たのは、1989年5月4日のマーティン・ベック劇場。オープンからすでに1年半が経っていて、“主演”バーナデット・ピータースもトニー賞受賞のジョアンナ・グリーソンもすでに舞台を去っていたが、幸運にもオリジナル・キャストの大半は残っていた。>

 その初演について、当時の感想を引用しながら書いたのが、こちら(#007)
 でもって……。

<初演『Into The Woods』は、童話という親しみやすい題材を、’70年代以降のソンドハイム(楽曲)作品に共通するシニカルな視線で複合、再構成して、現代に生きる物語としてよみがえらせた、深みのある、かつ楽しいエンタテインメント作品だった(オリジナル・キャストによる舞台を収録したヴィデオ・ソフトが出ています)。
 2002年版は、それを、よりスピーディに、より鮮やかにした、という印象だ。>

<子種に恵まれないパン屋夫妻は、隣に住む魔女から魔法の豆の種をもらい、森に入っていくつかの物を手に入れてくれば子供を授けると言われる。いくつかの物――すなわち、真っ白な牛はジャック(かわいがっていた牛を売りに行くように母親から言われ森の中へ)、赤いケープは赤頭巾(おばあさんを訪ねて森の中へ)、金の靴はシンデレラ(ガラスの靴ではなく金の靴を履いて舞踏会へ行くために森の中へ)、亜麻色の髪はラプンツェル(森の中の塔に幽閉されている長い髪の娘)――それぞれが持っている。
こうして森の中での入り組んだ物語が始まる。>

 ……と、ここまで書いてある。どうやら、初演当時に簡単にしか書かなかったストーリーを、より詳しく書こうとしたけれども、めんどくさくなったようです(笑)。
 #007にも書いたことですが、全てのきっかけとなる子宝に恵まれないパン屋夫婦の話は、「髪長姫」こと「ラプンツェル」の話の発端の援用かな、と。妊娠した妻のために隣に住む魔女の庭の植物ラプンツェルを夫が盗むという、ここには出てこないエピソードを改変したものと思われます。

 さて、これ以降の(第1幕はハッピーエンド、第2幕でカタストロフィとなる)ストーリーですが、前述のように初演舞台の映像ソフトもあり、すでに映画版も作られているので(ディズニープラスでいつでも観られます)、ぜひ、その辺りで確認していただくとして(笑)、このリヴァイヴァル版と初演版との違いについて書いておきます。

 まず、新たに加えられた楽曲は「Our Little World」。第1幕の中程で魔女とラプンツェルがデュエットで歌う。元々は1990年のロンドン初演版(演出リチャード・ジョーンズ)のための書き下ろし。その他、数曲で歌い手の構成の変更等に伴って歌詞が書き変えられているようだ。
 脚本としては、ブロードウェイ初演以前のサンディエゴでのプロダクションにあった三匹の子豚の登場が加えられている。あと、ジャックの白い牛が、作り物(初演)からライオン・キング的な着ぐるみ(本作)に変更とか。

 ところで、書きかけの感想のタイトルになるはずだった「テンポは快調、話は単調」の「話は単調」についての記憶がまるでない。楽しく観た気がするのだが。なにしろ、7月にもう1度観ているぐらいだから。

 演出は初演同様ラパインが自ら。振付はトワイラ・サープ門下のジョン・カラファ(『Urinetown』)。
 出演は、ジョン・マクマーティン(ナレーター)、ヴァネッサ・ウィリアムズ(魔女)、ローラ・ベナンティ(シンデレラ)、グレッグ・エデルマン(シンデレラの王子/狼)、メリッサ・ダイ(ラプンツェル)、クリストファ・シーバー(ラプンツェルの王子/狼)、スティーヴン・デローザ(パン屋)、ケリー・オマリー(パン屋の妻)、チャド・キンボール(牛!)、アダム・ワイリー(ジャック)、メアリー・ルイーズ・バーク(ジャックの母)、モリー・イフラム(赤ずきん)、トレイシー・ニコール・チャップマン(シンデレラの姉フロリンダ)、アマンダ・ノートン(シンデレラの姉ルシンダ)、ジュディ・デンチ(巨人の声)他。
 後に『Memphis』で主役をやるチャド・キンボールの牛役に驚く。もっとも、ジャック役とラプンツェルの王子役のアンダースタディでもあったようだが。
 赤ずきん役のモリー・イフラムはこの時16歳か。ホテル・エディソンのロビーで見かけた時は、もっと幼く見えたが。2年後に『Fiddler On The Roof』でテヴィエの末娘を演じるが、大人になってからは、もっぱら映画/TVで活躍しているようだ。
 ジュディ・デンチの声は、もちろん録音。
 

 『Into The Woods』(7月10日20:00@Broadhurst Theatre)リヴァイヴァル版2度目の観劇の感想は上記に譲ります。2度目も楽しく観た。

 このリヴァイヴァル版のオリジナル・キャスト盤はノンサッチから出ているが、同レーベルの他のソンドハイム作品オリジナル・キャスト盤同様、ブックレットが充実しているのでオススメ。
 なにしろ、歌詞のみならず、セリフまで載っている。ジョーン・マーカスの撮った舞台写真の数々も美しい。着ぐるみの牛がどんな様子かは、これに載っている写真でわかります。

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