The Chronicle of Broadway and me #876(Come From Away) & The Chronicle of Broadway and me #881(Come From Away[2])

2017年2月~3月@ニューヨーク(その2)/★2017年3月~4月@ニューヨーク(その2)

 『Come From Away』がApple TV+で配信開始(2021年9月10日)されるのに合わせて、こちらに紹介記事を書きました。2017年に観た同作品の感想も、その中に盛り込みましたので、そちらで読んでいただければ幸いです。(※上掲リンク先の記事を下段に[追記]しました。)
 ここでは、補足を2つ。

 1つは、プレヴュー中(2月18日開始)の2月とオープン(3月12日)後の3月に2度観ている理由。
 記憶に間違いがなければ、2月の観劇がニューヨーク到着日の夜だったせいで半分ぐらい睡魔と戦っていたからだと思います(笑)。

 もう1つは、今回の映像版に参加していないオリジナル・キャスト5人の内の1人が、チャド・キンボールだということ。
 1999年の『The CIvil War』への途中参加でブロードウェイ・デビューした後、2002年のリヴァイヴァル『Into The Woods』以降はオンとオフでオリジナル・キャストとして着実に実績を重ね、2009年の『Memphis』でスターとなった後の出演が、この作品でした。今回の不参加は少し残念。

 オマケを1つ。2月観劇時のプレイビルに、「Kids’ Night On Broadway 2017 Activity Book」という小冊子が挟んであって、要するに子供向けの舞台世界へのガイドブックなのですが、その中にある、どうやってブロードウェイにショウをかけるか、という図式がわかりやすくて面白いので載せておきます。小さいキャプションが読めるといいのですが。ライティングのミスで光っているところが出発点(アイディアが光っている)です(笑)。

[追記]

 「9・11事件の陰で起こった混乱と寛容のドラマ~ 驚くべき実話ミュージカル『Come From Away』!!」のタイトルで書いた上掲リンク先の記事です(<>内)。観劇は2017年の2月28日20:00と3月29日14:00@Gerald Schoenfeld Theatreの2度(記事の公開は2021年9月8日)。

『Come From Away』がブロードウェイに登場したのは2017年2月。全1幕の小規模な作品ながら、各方面で高評価を得、同時にSNSを通じた口コミでの支持も集めて、同年のトニー賞ではミュージカル作品賞を含む7部門でノミネート。受賞は演出賞(クリストファー・アシュレイ)に留まったが、その後も客足は衰えず、3年に及ぶロングランとなっている。
 新型コロナの影響で他劇場同様、昨年(2020年)春に一旦は中断したが、来たる9月21日からの再開を発表。それに先立って、劇場でのパフォーマンスを新たに撮影した映像版がApple TV+に登場する。

 『Come From Away』の題材は、カナダの小さな空港で実際に起こった非常事態下のドラマ。ニューファンドランド島のガンダーは人口1万人前後の小さな町だが、かつて大西洋横断における中継給油の重要地点だったこともあって、国際空港がある。その空港に、2001年9月11日の全米同時多発テロの煽りを受けて総数38機の航空機が緊急着陸、乗客・乗務員合わせて6,579人が不可避的に一時滞在することになった。
 小さなコミュニティに突如現れた大量の闖入者。そして起こる大混乱。この実話を元に、カナダ出身のアイリーン・サンコフとデイヴィッド・ヘインの2人(夫妻)が作曲・作詞・脚本を手がけて作り上げたミュージカルが『Come From Away』だ。

 作劇上の特徴は、登場する12人の役者全員が複数の役を次々に演じること。乗客・乗務員から地元の住民へ、その逆、あるいはそれぞれのグループ内の別人へと、ちょっとした扮装の変化で早替わりしていく。
 加えて、舞台上にはほとんどなにもなく、もっぱら椅子を動かすことによって、町のダイナー、飛行機内、その他もろもろの場所を表現する。
 そうした、ある種オフ・ブロードウェイ的な舞台づくりと演出の下、いくつかのドラマが交錯しながら進んでいく。役者たちの動きを舞踊的に見せるケリー・デヴァインの振付も含めて、そのテンポの早い展開がスリリング。この舞台の魅力のひとつだろう。

 そんな複雑な構成の作品を、細かい楽曲の流れで巧みにコントロールしていくアイディアも見事。
 楽曲そのものはケルティックな感触を持ち、実際、バウロン、ブズーキ、イリアン・パイプスといった、その手の音楽に特徴的な楽器も使われている。おそらく、ニューファンドランド島という土地の雰囲気醸成を意識してのことなのだろうが、結果的に繊細さと勢いとを併せ持った音楽が生まれ、劇的にも効果を発揮している。

 今回配信される映像版は、コロナ禍で閉鎖中の今年5月に、作品のホーム・グラウンドであるジェラルド・ショーンフェルド劇場で特別に上演し、その舞台を撮影したもの。客席には、9・11の生存者や最前線で活動した人たちが招待されたという。
 舞台上には、この作品でトニー賞の助演女優賞にノミネートされたジェン・コレッラをはじめとするオリジナル・キャスト7人を含む同舞台出演者が改めて顔を揃え、熱気あふれるパフォーマンスを披露している。

 異なる背景を持つ人々が閉鎖的空間に押し込められることで起こる偏見や対立は、アメリカという国の縮図でもある。そうした空気が人々の努力で次第に寛容へと変わっていくドラマは、未だ数多くの苦難の渦中にある人々にとっては希望の光でもある。この舞台が多くの人に愛されている理由は、そんなところにもあるのだろう。>

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