The Chronicle of Broadway and me #407(Guys And Dolls[L])

2005年6月@ロンドン(その3)

 『Guys And Dolls』(6月15日14:30@Piccadilly Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ユアン・マクレガー主演なのが人気に拍車をかけていると思われる『Guys And Dolls』は、新鮮なリヴァイヴァルを作ることで知られるドンマー・ウェアハウスの製作(『Nine』)。
 と来れば、ストレートな作風であるはずはなく、例えば、見た目で言えば、照明を落とし気味の陰影の濃い舞台になっている。1992年のブロードウェイ・リヴァイヴァル版のカートゥーン的色彩は薄れ、演技も含めて、ややリアルな印象。
 それもまた(原作の)デイモン・ラニヨン的世界だとは思うが、いかんせんテンポが(若干だが)悪くなる。また、マクレガーと並んで主演扱いで登場するジェイン・クラコウスキーを、リアリティ追求のためとはいえ(後ろ向きだが)トップレスにまでする必要があったかどうか。やっぱり、この作品に必要なのは、軽快さではないだろうか。
 あ、マクレガーの歌と踊りはソコソコです。>

 この時点で、ユアン・マクレガーはすでにミュージカル映画『Moulin Rouge!』(2001年)に出演済み。イギリスではTVで『Long Way Round』というロンドン・ニューヨーク間(東回り)を自らバイクで走破するドキュメンタリー番組が前年秋からこの年初めまでオンエアされ、オビ=ワン・ケノービを演じた3本目の映画『Star Wars Episode Ⅲ: Revenge of the Sith』(邦題:スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐)が5月に公開されたばかり。つまり、ミュージカル好きにも認知され、“お茶の間”レヴェルでも存在が知れ渡って……というタイミングだったわけだ。
 一方のクラコウスキーも、ミュージカル・ファンには当然のことながら、一般的にも1997年から2002年にかけて出演したTVドラマ『Alley McBeal』(邦題:アリー my Love)で知られていたはず。
 てことは“スター芝居”の側面もあったわけで、そういう意味では、デイヴィッド・ルヴォーがドンマー・ウェアハウス版から引き続いて演出を担当した2003年ブロードウェイ・リヴァイヴァル版『Nine』と気配が似ていなくもない。芸術面と興行面のバランスの微妙な感じが。
 ちなみに、このプロダクションも、その『Nine』同様ブロードウェイ入りが計画されたらしいが、沙汰止みになっている。

 ところで、マクレガーはスカイ・マスターソン役、クラコウスキーはミス・アデレイド役で、この2人がカップルなわけではない。
 スカイ・マスターソンの相手サラ・ブラウン役はジェナ・ラッセル。この役で翌年のオリヴィエ賞主演女優賞の候補になり(受賞はクラコウスキー)、翌年の『Sunday In The Park With George』で受賞。同作のブロードウェイ版にも出演してトニー賞の候補になっている。
 ミス・アデレイドの相手ネイサン・デトロイトを演じたのはダグラス・ホッジ。彼も、この役でオリヴィエ賞の候補になり、2009年に『La Cage Aux Folles』で受賞している(この『La Cage Aux Folles』は情感豊かで素晴らしかったが、観た時にはホッジはすでに降りていた)。

 演出は当時のドンマーウェアハウス芸術監督マイケル・グランデージ。振付はロブ・アシュフォード(『Thoroughly Modern Millie』)。

 

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