The Chronicle of Broadway and me #841(Trip Of Love)

2015年11月@ニューヨーク(その6)

 『Trip Of Love』(11月18日14:00@Stage 42)は、ブルー・マン・グループ『Tubes』を手がけたことで知られる出口最一(でぐち まこと)プロデュースのショウ。
 遡ること7年半前の2008年に大阪でワールド・プレミア公演が行なわれているが、作品の構想自体は1990年代に個人的にうかがったことがあった。20年近い時間をかけて実現したわけだ。

 ウサギの穴に落ち込んだ少女が紛れ込んだのは1960年代後半のフラワー・ムーヴメント的世界だった、という設定で繰り広げられるソング&ダンスのショウで、楽曲は”その時代”の既成曲。いわば、”ジュークボックス・ミュージカル・レヴュー”。
 プレイビルに、創案・演出・振付のジェイムズ・ウォルスキーによる、こんな”覚え書”が載っている。
 「ブロードウェイが多くのレヴュー形式のショウで満たされていた時代があった。『Bubbling Brown Sugar』『Sophisticated Ladies』『Dancin’』『Sugar Babies』『Ain’t Misbehavin’』等々といった。残念なことに、ソング&ダンス・ミュージカルは絶滅しかけている。『Trip Of Love』は、私なりにその流れをニューヨークの劇場で生き返らせようとする試みだ。」

 丁寧に作られていたが、その内容に、正直、なぜ今? という疑問は抱いた。
 フラワー・ムーヴメントの象徴的な存在とも言える『Hair』が前年の40周年記念上演を経てセントラル・パークのデラコート劇場に登場したのが2008年夏。奇しくも本作のワールド・プレミア公演と同じ年。
 その『Hair』の感想に「“愛と革命の時代”の徴兵忌避の話が40年後の現実とダブる、というあたりに今日性を見出すこともできないではないが、“あの頃”のファッションで出てこられると、いくら若い役者たちがいきいき演じようと、やはり“懐かしもの”にならざるをえない。」と書いているが、そこからさらに7年半。2014/2015シーズンはブロードウェイにもノスタルジックなミュージカルが少なからず登場したが、トニー賞を席巻したのはオフで生まれた意欲作『Fum Home』だった。そんな年だ。
 時代の空気と合っていない。『Trip Of Love』については、そう感じざるをえなかった。

 とはいえ、この年の9月26日にプレヴュー開始、正式オープン10月18日で、翌年の8月7日まで続いているのは立派。出口さんの粘り強さには感服する。

 出演は、ジョーイ・キャルヴェリ(『Rock Of Ages』『Wonderland』)、デイヴィッド・エルダー(『Guys And Dolls』『Beauty And The Beast』『Once Upon A Mattress』『Titanic』『42nd Street』)、ケリー・フェルサウス、ディオンヌ・フィギンズ(『Hot Feet』『Memphis』『Motown The Musical』)、オースティン・ミラー、タラ・パルシャ・モーツ、ローリー・ウェルズ、他。

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