The Chronicle of Broadway and me #552(Rock Of Ages)

2009年4月@ニューヨーク(その4)

 『Rock Of Ages』(4月11日14:00@Brooks Atkinson Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<昨秋始まったオフ公演を早々に切り上げてオンに移る準備を始めたため、タイミングが合わず観逃していた作品。
 ’80年代のハード・ロック系ヒット曲を使ったジュークボックス・ミュージカルで、その時代のロスアンジェルスのライヴ・ハウスが舞台。
 正直、あまりに安直な設定とひねりのないストーリー展開に、説明する気も失せる。シャレっ気もないし。ミッチェル・ジャーヴィス演じる強引な狂言回しがいなかったら、空中分解していただろう。
 上演中に飲み物の注文をとりに回るってのもどうかと思うが、まあ、それが気にならないほど、どうでもいい内容ってことです。
 この時代のその手の音楽が好きな人のみ、どうぞ。>

 けちょんけちょんな評価ですが(笑)、「説明する気も失せる」ストーリーをざっくり説明すると、スターを目指して都会にやって来た若者たちが苦い恋と挫折を乗り越えて小さな幸せを見つける、みたいな話。その周辺で芸能世界にありがちなあれやこれやが起こる、と。それを現実のパロディめいたコメディ仕立てにしているわけだけど、そのセンスがどうも……ってとこでしょうか。
 この程度の作品がロングランしてしまうのが、『Mamma Mia!』によるジュークボックス・ミュージカル解禁以降に見られるブロードウェイ(観客)のウェスト・エンド化現象の一端。トニー賞で5部門の候補になったものの受賞がなかったのが、ニューヨーク演劇界に残っていた矜持かも。後にトム・クルーズが出演して映画化されたのは、ご承知の通り。
 「上演中に飲み物の注文をとりに回る」ってのは劇中のライヴハウス感を出すためだったわけだが、この作品あたりを皮切りに、幕間に客席に売り子が現れて観劇中の飲食がOKになったように思う。これまた、ウェスト・エンド化現象の一端。

 使用楽曲については「ジャーニー、ボン・ジョヴィ、REOスピードワゴン、パット・ベネター、ポイズン、スティックス、フォリナー、そして、もっと!」と上掲写真の劇場看板にあるが、「もっと!」の部分は、クワイエット・ライオット、デイヴィッド・リー・ロス、ナイト・レンジャー、スターシップ、トゥイステッド・シスター、スティーヴ・ペリー、ヨーロッパ……その他、各自検索していただきたい(苦笑)。
 編曲イーサン・パップ、脚本クリス・ダリエンツォ。
 演出クリスティン・ハンギ、振付ケリー・デヴァイン(『Frankenstein』)。

 出演は、上記ミッチェル・ジャーヴィスの他、主要な役が、コンスタンティン・マルーリス(『The Wedding Singer』)、エイミー・スパンガー(『Kiss Me, Kate』『The Wedding Singer』)、ジェイムズ・カルピネロ(『Saturday Night Fever』『Xanadu』)。キャシー・リグビー版『Peter Pan』でフック船長を演じていたポール・ショーフラー(『Sweet Charity』)も出ていた。