The Chronicle of Broadway and me#1066(Rock & Roll Man)

2023年5月~6月@ニューヨーク(その10)

 『Rock & Roll Man』(6月3日20:00@Stage 3/New World Stages)は、「ロックンロールの命名者」と言われる(ことの多い)伝説のディスクジョッキー、アラン・フリードの後半生を描いた物語。
 安易なジュークボックス・ミュージカルかも、と危惧したが、低予算ながら丁寧に作られていて楽しめた。

 まずは、主人公フリードのキャラクターを、“オリジナルな”ロックンロールに一途な愛情を注ぐ情熱的な人物、という線で押し通してドラマを構成したのが功を奏した。
 そうしたフリードの人物像を際立たせるための相手役が、前半のレオ・ミンツと後半のモリス・レヴィ。フリードが全国区になるまでのイノセントな時代の年上の相棒ミンツは、オハイオ州クリーヴランドの音楽好きの“善良な”レコード店主。ニューヨークに出て業界のダーティさに巻き込まれる時代にフリードに絡んでくるレヴィは、ニューヨークのジャズ・クラブ「バードランド」やルーレット・レコーズを経営する少しばかり“悪辣な”野心家。前後半で明暗が分かれるフリードの運命を、この2人との人間関係を核にして描いているのもうまい。

 加えて、当然のように出てくるロックンロール・レジェンドたちを、モノマネでありながらもドラマの上でもそれなりの存在として扱って、フリードとの微妙な信頼関係(ここがミソ)を描いたのもよかった。中でもリトル・リチャードは、ドラマの外枠として設定されている架空のフリードの死後(?)に行なわれる裁判(告発者はFBIのエドガー・フーバー)の弁護人として登場。そっくり度も高いが、展開の上でも重要な役割を果たす。
 また、そっくりショウ場面の扱いも適度に抑制され、話の展開から浮かないように工夫されていて、そこも単なるジュークボックスものとは一線を画す感じで、いい。選曲も、気持ち渋め。

 舞台用のオリジナル楽曲を書いたのは、オフ作品『Freckleface Strawberry』を手がけたゲイリー・カッパー。その『Freckleface Strawberry』同様、カッパーとローズ・カイオラが共同で脚本を書いている。
 演出ランダル・マイラー(『It Ain’t Nothin’ But The Blues』『Love, Janis』『Hank Williams: Lost Highway』『Good Ol’ Girls』『Forever Dusty』)。振付ステファニー・クレモンズ。

 アラン・フリード役コンスタンティン・マルーリス(『Rock Of Ages』『Jekyll & Hyde』)の演技は、ちょっとロビン・ウィリアムズを連想させる。
 レオ・ミンツとモリス・レヴィの両役を演じたのはジョー・パントリアーノ。ドラマを支える好演。
 大活躍のリトル・リチャード役はロドリック・コヴィントン(『Once On This Island』)。
 『Motown The Musical』でダイアナ・ロスを演じていたヴァリシア・レカエバリシア・ルカエ(『Threepenny Opera』『110 In The Shade』『Ragtime』)がラヴァーン・ベイカー役で出ている。

The Chronicle of Broadway and me#1066(Rock & Roll Man)” への1件のフィードバック

コメントを残す