The Chronicle of Broadway and me #276(Love, Janis)

2001年10月@ニューヨーク(その5)

 『Love, Janis』(10月6日19:00@Village Theater)は、1970年に成功の頂点で急逝した伝説のロック歌手ジャニス・ジョプリンの伝記的ミュージカル。ジャニスの妹ローラが書いた同名の伝記本を元に作られている。

 特徴は、語り手のジャニスと歌い手のジャニスを別の役者が演じるところ。つまり、バンドをバックにしたジャニス・ジョプリンのそっくりショウと、(一部インタヴュアーを媒介にした)モノローグによる一人芝居との組み合わせ。
 一見まとまりがなさそうに思われる構成だが、これが案外よくできていた。

 成功の第一は、やはり演奏の部分がしっかりしていたこと。
 小さい劇場にも関わらず、バンドとして、ギター×2、ベース、ドラムス、キーボード、サックス、トランペットというそれなりの人数を並べ、それをバックに、アンドラ・ミトロヴィッチ、キャシー・リチャードソンという2人が歌い手としてダブル・キャストで(公演ごとに入れ替わって)臨むのだが、その演奏が充実していた。そっくりショウではあるが、それを超えて伝わってくるものがある。そんな印象。
 音楽監督のサム・アンドリューが、ジャニスと一緒にやっていたビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーやコズミック・ブルーズ・バンドのメンバーだったというのも、ここでは大きいだろう。
 ダブル・キャストの意味は昨今の日本のミュージカルの場合と(たぶん)違って、オペラ歌手に休演日が必要なように、ジャニス流で歌うのはノドに負担がかかるので連続での出演が厳しいからだと思われる。それを裏付けるかのように、2013年の『A Night With Janis Joplin』でもジャニス役はダブル・キャストで、なおかつアンダースタディが演じている日もあった。つまり、それなりに難役だということだ。

 成功の第二は、モノローグ部分を、生前のジャニスの手紙の文章やインタヴューでの発言を使って仕上げたからではないだろうか。この部分が過剰に芝居がかっていないのがいい。演奏の狭間で、ちょうどライヴのMCのような感じになって、全体のバランスが保たれていたと思う。
 こちらのジャニスを演じるのはキャサリン・カーティン。話を促すインタヴュアー役はジョン・レオナード・トンプソン。
 ちなみに、タイトルの「Love, Janis」は手紙の最後に書かれた決まり文句。上掲写真を見ていただけるとわかるが、妹に宛てたジャニスの手紙の筆跡をそのままタイトル・ロゴにしていると思われる。

 脚本・演出ランダル・マイラー(『It Ain’t Nothin’ But The Blues』)。共同発案者として妹のローラ・ジョプリンが、コンサルタントとして弟のマイケル・ジョプリンがクレジットされている。
 このオフ・ブロードウェイ公演は2003年1月まで続くことになる。

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