The Chronicle of Broadway and me #197(Sharps, Flats & Accidentals)

1999年1月@ニューヨーク(その11)

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 『Sharps, Flats & Accidentals』(1月2日11:00@Alice Tully Hall)について、「カラマーゾフ兄弟の軽業」のタイトルで旧サイトに書いた感想。前に同兄弟のショウを観た時はまだ旧サイトを開設していなかったので、その時の感想を引用している。前回分を既読の方には、その部分が重複になるが、ご容赦を。

<ホリデイ・シーズンなどに時折ブロードウェイで上演されるクラウン芸のショウ『Fool Moon』は、出演者(2人)の1人、ビル・アーウィン(映画『Stepping Out』、舞台『Scapin』)の知名度もあってか、日本でも比較的知られているようだが、フライング・カラマーゾフ・ブラザーズのショウはどうなんだろう。4人組の楽しく達者なジャグラー集団だ(ホントの兄弟じゃありません)。
 彼らを初めて観たのは、1995年の元旦。ブロードウェイのヘレン・ヘイズ劇場でやっていた『The Flying Karamazov Brothers Do The Impossible!』というタイトルのショウだった。
その時の感想はこうだ。

 「最大の見せ場は4人入り交じっての驚異的なジャグリングだが、その他にもアイディアがいっぱい。ジャグリングしながら、そのピンでマリンバを演奏する。同様に、ジャグリングしながらピンで、背負ったシンセドラムを演奏する。腕や足を中心に体の各所にシンセサイザーのキイを仕込み、ジャグリングしたボールをキイに当てて演奏する。……という音楽系がかなり秀逸。
 ジャグリングする物では、刃物がスリリングなのはもちろんだが、ザ・ギャンブルと言うコーナーで客の持ち寄った物の中からジャグリングする物3つを選ぶのも、おかしいだけでなく緊張する。観た日に選んだのは、中にゼリー状の物が入ったゴム風船、突起のたくさん出た木の玩具、むき出しの棒状バター。見事規定の10回ジャグリングを一発でクリアした。その他、手品的芸、扇子を使った踊りや英語俳句等もやるが、この辺はジョーク。それより、1人ずつでも見事な芸を見せる各メンバーのキャラクターにそれぞれ味があるのが何より楽しい。
 長年組んでやっているという5人組のバンド、カミカゼ・グラウンド・クルーも、スネア・ドラムス+チューバのリズム隊に、スライド・トランペット、バリトン・サックス、アルト・サックスという編成で客席からマーチングで登場、ユニークなサウンドを聴かせた。」

 そう言えばそうだった、と自分でも改めて思い出したが(笑)、今回のショウ『Sharps, Flats & Accidentals』も、基本的にはほぼ同じプログラム。
 違っていたのは、劇場がリンカーン・センターのアリス・タリー・ホールだっただけに、最初に弦(女性奏者)を交えた5重奏のスタイルで幕を開けたことと、カミカゼ・グラウンド・クルーが参加していなかったこと。それにメンバーが1人入れ替わっていたこと(プログラムや看板の写真は替わっていなかったから、ある程度急な変更だった可能性もある)。
 あと、刃物のジャグリングや前回のクライマックスだった大きな段ボール箱の投げ合いがなかったのも会場の関係か。背後に壁のように積み上げられていた段ボール箱の壁が崩れる、というのが前回の幕切れだったのだが。そうそう、英語俳句もなかったな。

 1月2日日曜日の午前11時という、まあ普通のアメリカ人たちは出かけないような日にち及び時間帯だったので、会場はガラガラ。子供連れの家族が近所の公民館に集まったような雰囲気だったのだが、それでも“ザ・ギャンブル”のコーナーには客席から様々な“難物”が寄せられて、ニューヨークでの彼らのパフォーマンスの浸透度を見た気がした。こういうショウは、観客が少ないなら少ないなりに親密な雰囲気ができて悪くないですね。

 格言「名人の名人たるゆえんは、失敗した時のフォローまでもが技になっていること」。>

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