The Chronicle of Broadway and me #1022(Coal Country)

2020年2月@ニューヨーク(その4)

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 『Coal Country』(2月23日20:00@Anspacher Theater/Public Theater)について書いた観劇当時の感想(<>内)。

<2010年4月5日にウェスト・ヴァージニア州モントコールで起こった、29人の死者を出した炭鉱の爆発事故を題材にしたミュージカル。
 プレイビルによれば、2016年に作家陣は現地を訪れて、生存者や犠牲者の家族に取材している。その時の彼らの発言や、裁判の記録などを元に、そこでの言葉をほぼそのまま生かして仕上げたのが、この作品らしい。
 作家陣というのは、脚本・演出のジェシカ・ブランク、脚本のエリック・ジェンセン、楽曲作者のスティーヴ・アール。

 スティーヴ・アール。
 簡単に言えば、オルタナ・カントリーの最重要人物のひとり。
 彼のことを知ったのは、あまり新しい音楽を聴かなくなっていた1990年代の終わりに、畏友・萩原健太からルシンダ・ウィリアムズのアルバム『Car Wheels On A Gravel Road』を薦められたのがきっかけだった。素晴らしいアルバムで、そのプロデューサーの一人がスティーヴ・アールだったのだが、彼が、ウィルコやサン・ヴォルトの旧アンクル・テュペロ勢をはじめとする当時の若手オルタナ・カントリー・アーティストにどれだけ影響を与えたかを萩原から教わり、その辺りの音楽を少しずつ聴くようになった。思えば、あれがアメリカーナ音楽再入門だった。
 その後、オルタナ・カントリーの動きには盛衰があるものの、スティーヴ・アール自身は、時折、タリバン兵として戦ったアメリカ人のことを歌った「John Walker’s Blues」等で大きな話題を投げたりしながら、今日まで着実に活動を続けている。

 そんなスティーヴ・アールが「Original Music」で関わって、しかもパブリック・シアターで上演されるミュージカルが悪かろうはずがない。そう思って早くにチケットを押さえたが、昨夜、劇場に足を運んで驚いた。スティーヴ・アール本人が出てきたのだ。しかも、語り部的に、ギターとバンジョーを弾きながら、かなり歌う。至福。

 前述したように、取材した人々の発言が元になっているので、全体としてはモノローグの集成というスタイル。そうした言葉の数々とスティーヴ・アールの音楽とが絡み合って、感情が凝縮した劇空間が作り上げられる。そんな舞台。

 3月29日までの期間限定公演です。スティーヴ・アールに関心のある方は、お観逃しなく。>

 (追記)
 4月5日まで延長されました。

 (再追記)
 映像版もアップされていました。こちら

 (再再追記)
 このミュージカルの楽曲をバンドで演奏したアルバム『Ghosts Of West Virginia』が5月にリリースされましたが、その全曲をスティーヴ・アールがソロ演奏した映像がストリーミング配信されました。後半には興味深い質疑応答も付いています。ご覧ください。
 Union, God and Country: A Livestream Performance of Ghosts of West Virginia + Q&A

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