The Chronicle of Broadway and me #411(The Far Pavilions)

2005年6月@ロンドン(その7)

 『The Far Pavilions』(6月18日15:00@Shaftesbury Theatre)について、『The Woman In White』に続けて旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。なので、「同様」とか「こちらも」とか言っているのは同作を指してのこと。

<同様の問題点を持つのが『The Far Pavilions』
 こちらも設定はヴィクトリア女王時代で、場所はインド。打楽器を駆使したインド音楽の部分は活気があって、まだしもなのだが、繰り返し歌い上げ続けるオペラ的楽曲には飽きが来る。
 隣席で喜んでいる年配のイギリス人女性に感想を訊かれ、歌いすぎだと思うと答えたら、それがミュージカルよ、と言われた。そういう意味じゃないんだけど(笑)。>

 原作は、イギリス領インドで生まれ育ったイギリス人女性、M・M・ケイ(1908~2004年)が1978年に発表した同名ベストセラー小説。1984年にHBOのTVシリーズにもなっている。
 19世紀半ば、旅の途中にインドで生まれたイギリス人少年アシュトン。幼い頃に両親が亡くなり、インド人の乳母シータに育てられる。イギリスからの独立運動が激しくなる中、危険を避けるため、浅黒い肌を隠れ蓑にインド人として。というのが物語の発端。
 疑似親子の2人は、インド内のとある王国に落ち着くが、事件が起こって逃げ出さざるをえなくなる。アシュトンは、親しくなっていた王族の姫アンジュリとの再会を約して王国を去る。病んでいたシータは逃げる途中で亡くなるが、その際に自分の本当の生い立ちを告げられたアシュトンはイギリスに渡り、成長の後、軍人として再びインドを訪れる。アンジュリと出会うために。
 宗主国イギリスと独立を目指すインドの対立は、アシュトンとアンジュリとの立場にも影響を及ぼすが、アシュトンの中にもインド人として育った自分とイギリス軍人の自分との葛藤がある。という内面的なこととは別に、アンジュリには親の決めた結婚があり(相手がひどいやつ)、さらにその先には(今日のアフガニスタン情勢の直接的な原因でもある)対ロシア戦略を前提にしたイギリスのアフガニスタン進出の目論見にアシュトンが巻き込まれるという展開が待っている。
 まさに、あの手この手。

 とまあ、後から調べたことも含めて、そんな内容なのだが、当時の感想にある通り、とにかく音楽的にかったるかったという記憶が。
 そう感じたのは極東からの日本人観光客だけではなかったようで、英語版ウィキペディアによれば、この公演、2週間のプレヴューの後2005年4月14日に正式オープンし、同年9月17日にクローズしている。半年続かなかったわけで、オリヴィエ賞からも全く無視されたようだ。

 メインの作曲がフィリップ・ヘンダーソン。インド音楽の方がクルジット・バムラ。どうやら後者の方が有名らしい。イギリスにおけるバングラ(パンジャーブ州の民謡でバングラデシュとは無関係)のパイオニアとして知られているようだ。作詞と脚本がスティーヴン・クラーク。
 演出のゲイル・エドワーズはオーストラリアの人。振付のカレン・ブルースの経歴にはドンマー・ウェアハウスで上演された『Pacific Overtures』でオリヴィエ賞を受賞と書いてある。興味深い。

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