フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~@日生劇場 2021/12/24 13:00

 作曲家フランク・ワイルドホーンのミュージカル作品としては『Jekyll & Hyde』以来の成功作だと思う。

 ブロードウェイ第4作『Dracula, The Musical』の感想でも書いたことだが、ワイルドホーンの作曲したミュージカルは、第1作の『Jekyll & Hyde』以外、プレヴュー開始からクローズまでの期間は2年3か月とそれなりの長さだった第2作『Scarlet Pimpernel』も含めブロードウェイでは興行的に成功していない。
 ちなみに、作風をガラッと変えて失敗した『The Civil War』の次に登場した『Dracula, The Musical』は、明らかに『Jekyll & Hyde』路線(ゴシック・ロマンス)への回帰を狙った作品だったが、うまくいかなかった。「『Jekyll & Hyde』にあった、いい意味でB級なハッタリが乏しくなっていたことが敗因の一つ」というのが個人的分析だが、この『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』には、その「いい意味でのB級なハッタリ」が原作の段階から溢れていて、それにワイルドホーンの“あざとい”作風の楽曲が見事に呼応。結果、魅力的な世界観を作り出し、成功作となった。
 日本のミュージカル界はワイルドホーンを重用しすぎている、と、ずっと疑問視し続けていたが、ようやく成果が現れたわけだ。両者にとって、まずは、めでたい。

 ご承知の通り、元ネタは、武論尊(原作)×原哲夫(作画)による大ヒット漫画『北斗の拳』。
 素晴らしいのは、それを舞台化するにあたっての、脚本の高橋亜子(作詞も)と、演出の石丸さち子の仕事ぶり。巧みなダイジェストでありつつ、多彩なキャラクターそれぞれの見せ場を設け、かつ、全体としての緊張感も途切れない仕上がりには拍手を送りたい。加えて、振付(辻󠄀本知彦&顔安(ヤン・アン))×アクション(渥美博)×フライング(松藤和広)が一体になって生み出す役者達の動きも見事。映像、照明、装置、衣装、音響に到るまで、スタッフの仕事の充実度が高い。

 出演者は、ケンシロウ/大貫勇輔、リュウケン/川口竜也、トウとトヨ/白羽ゆり(二役)、マミヤ/松原凜子、バット/渡邉蒼という単独キャスティングの他、観た回のWキャスト・役替わりの配役は、ユリア/May’n、トキ/加藤和樹、シン/上田堪大、ジュウザ/伊礼彼方(公演日にちなんで「クリスマス・イヴ」を口ずさんでいた)、ラオウ/宮尾俊太郎、リン/山﨑玲奈。押しなべて平均以上の出来で、満足した。

 複数のキャラクターの見せ場が用意されていることから言って、宝塚歌劇に向いてる……と宝塚歌劇も考えているのではないかと思うが、どうだろう(笑)。

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