アラバスター@東京芸術劇場プレイハウス 2022/06/28 13:00

 実際の上演は短い期間で終わりましたが、(2022年)7月25日18:00から1週間、舞台映像の配信が実施されるらしく、いい作品でしたので、直前ですが感想を上げておきます(配信の申し込みはこちらのようです)。

 まずは、始まってすぐの脇役2人による“ジャズっぽい(ジャッキー&ロイみたいな)”男女コーラスを聴いて、オッ! と思う。これは『City Of Angels』的なヤツなのか? そんな期待がふくらむ。
 結局そこまでジャズ的ではなかったが、奥村健介の作り出した音楽は(セリフとの緊密な絡み具合も含めて)スリリングで質が高い。楽曲の説明的な要素を優先しがちな日本のオリジナル・ミュージカルにあっては、特筆して評価されるべきポイントだろう。

 この作品でもう1つ強調しておきたいのは、中心になる登場人物の1人が眼球以外が透明だということ。
 物語の鍵になるのはマッド・サイエンティストの発明した「細胞を透明にする」光線で、それを使って半透明の体になったアラバスターと名乗る男が犯罪を重ねるのだが、それ以前に発明者の娘が実験に使われて命を落としている。その時に産後間もない彼女の娘も巻き添えになって透明な体になった。そういう設定。
 その眼球以外が透明な娘を舞台上でどう表現するか。これが大きな見どころ。さらに、舞台上にいるのに見えない登場人物の声はどう扱われるのか?
 その課題に挑む演出家・荻田浩一の様々に工夫を凝らした表現が、音楽に次ぐ、この作品の魅力の1つ。

 出演者のレヴェルは総じて高く、安心して観ていられる。
 個人的には、手塚まんが稀代の悪役ロックを演じる矢田悠祐の悪辣なキレぶり(笑)にヤラレた。あと、涼風真世の……(観てのお楽しみ)。

 多くの謎が渦巻く物語については、これ以上は触れないでおきます。ご覧になって確かめてください。
 1つだけ言っておくと、原作である手塚治虫の同名コミックとは人物設定や構成が変わっているところが多いですが、現行の単行本でアメリカ人になっているアラバスターを名乗る人物が日本人として登場するのは、雑誌連載時の設定に戻した、ということのようです。

コメントを残す