The Chronicle of Broadway and me #655(Ghost: The Musical)

2011年7月@ロンドン(その6)

 『Ghost: The Musical』(7月27日19:30@Piccadilly Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<同名映画(1990年)の舞台ミュージカル化。映画版で話題になった「Unchained Melody」は使われているが、それ以外の楽曲は、デイヴ・スチュワートとグレン・バラードという音楽業界のビッグ・ネームが手がけていて、それも話題。

 ストーリーは、ほぼ映画版通りの展開。ということは、映画をご覧の方はおわかりかと思うが、映画ではCGで描かれた主人公の“ゴーストぶり”(例えば壁をすり抜けるとか)を舞台上でどう表現するのか、が関心の的となる。
 その辺は、さすがに技術とアイディアを凝らしていて関心はするのだが、それが楽曲や振付と一体になって素晴らしい効果を上げているかと言えば、はなはだ怪しい。
 思うに、ある種の映像的技術と演劇との相性は必ずしもよくないのではないか。タイミングその他を合わせるのに高い技能や訓練が必要なのはわかるが、それは舞台裏の話。特にミュージカルの場合、やはり観たいのは、訓練を積んで高い技能を備えた役者が、生の肉体を使って披露する歌唱やダンスであって、それを引き立てる効果を映像的技術は生みづらい気がする。
 近年、その手のプロジェクション技術を駆使することが非常に多いロンドン産ミュージカルを観ていて感じるのは、興奮よりも煩わしさだ。この辺のことは機会があったら別に分析してみたい。
 ともあれ、この作品の場合、ミュージカル的興奮とは結びつかないものの、映像的技術のマジックを使う必然性は一部あるわけで、その部分に限って言えば、見どころにはなっている。

 で、ミュージカル的魅力について言えば、まずまずの出来。
 もっとも、その多くの部分を(映画ではウーピー・ゴールドバーグが演じた)霊媒師役のシャロン・D・クラークの歌が担っている。
 楽曲も総じて悪くないが、映画に出てくる「Unchained Melody」以上に印象に残るものがないのは残念。
 来春にはブロードウェイでも開幕する予定のようだが、はたして当たるか。少なくとも個人的には、ロンドンの若い観客たちのようにはノレなかった。>

 その後、映像的技術と演劇の融合は驚くほどの進歩を見せたが、それを生かすも殺すも“使い方”しだいだという点は変わっていないと思う。

 作曲・作詞デイヴ・ステュワート&グレン・バラード、作詞・脚本ブルース・ジョエル・ルービン(映画版の脚本家)。
 演出マシュー・ウォーシャス(『Follies』)。振付アシュリー・ウォーレン。ヴィデオ&プロジェクション・デザインは『Love Never Dies』『The Wizard Of Oz』も手がけているジョン・ドリスコール。

 上掲感想中に出てくるシャロン・D・クラークは『We Will Rock You』のキラー・クイーン役が印象的だった人。観逃した2021年のリヴァイヴァル版『Caroline, Or Change』でブロードウェイ・デビューし、トニー賞の候補になった。
 死んじゃう主人公サム役リチャード・フリーシュマン。その恋人モリー役は後に『Frozen』でエルサを演じるケイシー・レヴィ。この2人は揃ってブロードウェイ版にも出演することになる。悪役カールはアンドリュー・ラングトゥリー。

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