三浦半島の人魚姫/箱根山の美女と野獣@KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ 2024/02/08 14:00

 ちょうど2年前に観た『冒険者たち~Journey To The West~』に続く、KAATの「カナガワ・ツアー・プロジェクト」第2弾。地域密着型劇場を目指す同プロジェクトは、①神奈川県各地に根ざした新旧の“ネタ”を掘り起こす、②横浜でスタートして神奈川県各地の劇場を巡回する、という特徴を持っている。

 今回は、第1部『三浦半島の人魚姫』、第2部『箱根山の美女と野獣』の2本立て。
 『冒険者たち』も『西遊記』の一行が現代の神奈川にタイムスリップしてくるという唐突な始まり方だったが、今回の2篇も、それぞれ理由なく始まる。
 前者は、相模原で自然派レストランを営む若い夫婦の妻が、その夜どこかに現れるらしい人魚を見るために突然全てを放棄し、水辺を目指して探索に出ていく。後者は、箱根山に住まう龍(に化身した神)が仙石原の別荘開発に関わった工務店一家を訪れ、3人の娘のいずれかを妻として娶ると宣言する。
 現代の“おとぎ話”として、この“持って回らない”始まり方もいい感じ。以降は、前回同様にドラマの展開と共に繰り広げられる「県内に点在する土地に根差した民間伝承や歴史」+「今の神奈川の風俗的な面」の紹介/描写を楽しむ。と同時に、手作り感あふれる融通無碍な演劇の楽しさも味わう。そんな舞台。
 全体を通して見えてくることを敢えて言えば、希薄になりがちな人と人とのつながりを再確認していくような風情か。それに相応しく、個性的なキャラクターが次々に登場。みんな面白いが、中でも前回強烈な印象を残した実在の爬虫類研究家・白輪剛史の再登場(第1部)はうれしかった。
 その白輪剛史役他を演じる菅原永二と、作者/演出家でもある長塚圭史が前回に引き続きの出演。新規出演組は、片岡正二郎、柿崎麻莉子、四戸由香。
 自由劇場出身の片岡は、芝居と共にヴァイオリンを含め演奏面でも貢献。柿崎、四戸の2人は本来ダンサーで、本格的にセリフのある演技はこれが初だとか。それが逆に功を奏したか、舞台に新鮮な刺激を与えているように見えた。柿崎は振付も担当。
 阿部海太郎の音楽、トウヤマタケオの演奏(ピアノ/キーボード/パーカッション他)も、単なる劇伴を超えた意味と味わいがあって、いい。前回同様、ミュージカル的な演出もある。

 KAAT公演は12日までだが、前述したように、以降、神奈川県内を回る予定。詳細は公式サイトで。

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