The Chronicle of Broadway and me #941(Rodgers & Hammerstein’s Carousel[3]/All I Want Is One Night)

2018年6月@ニューヨーク(その5)

 この渡米で観た作品の内、先行して感想を上げていなかった2本について。
 

 『Rodgers & Hammerstein’s Carousel』(6月2日14:00@Imperial Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<3度目の観劇。
 キャリー役が代役で、スカーレット・ウォーカーという人。これがブロードウェイ・デビューだとか。
 リンゼイ・メンデズと違って、普通にうまいタイプ。あたりまえだが、個性って重要なんだな。>

 過去2度の感想はこちら
 

 『All I Want Is One Night』(6月5日19:15@Theater A/59E59)が描くのは、レズビアンであることを公表していた(バイセクシャルだったらしい)フランスの歌手/女優シュジー・ソリドールの半生。

 それを半ばキャバレー・ショウのスタイルで上演する。
 と言うのも、シュジー・ソリドールはパリに自分のキャバレーを持っていたからで、そこに有名画家たち(パブロ・ピカソ、藤田嗣治、マリー・ローランサン、モイズ・キスリング、ジョルジュ・ブラック、ジャン・コクトー、タマラ・ド・レンピッカ等々)の描いた彼女自身の肖像画を飾り(「世界で最も多くの画家に描かれた女性」だと言われている)、かつ、その舞台に立って歌ってもいた(このオフ公演の舞台はそのキャバレーを模して作られている)。
 シュジーは「Lili Marleen」(リリー・マルレーン)のフランス語ヴァージョンをレコーディングしたことでも知られているが(劇中でも歌われる)、それがナチス占領下のパリだというあたりに彼女の人生の岐路が見える。戦前から流行っていたキャバレーの営業を続けたシュジーはナチスのお気に入りとなり、戦後、ナチス協力者として公民権を剥奪されることになるからだ。

 終焉の地となる南フランスのオー・ド・カーニュにあるアンティーク・ショップに佇むシュジーの回想として始まるドラマは、人生を間もなく終えようとしている彼女の感情の起伏に合わせて、1930年代から1960年代の間を様々に行き来しながら展開する。なかなかに面白い。
 脚本を書いたジェシカ・ウォーカーがシュジー・ソリドールを演じる。プロデュースも、英語詞を付けたのもウォーカー。共演者が2人いて(レイチェル・オースティン、アレグザンドラ・マディー)、それぞれ複数役を演じる。
 演出はカンパニーとなっているが、オリジナル演出としてサラ・フランコムの名がある。
 フランコムはマンチェスターのロイヤル・エクスチェンジ・シアターで制作された初演の際の演出家で、その好評を受けてロンドンのウィルトンズ・ミュージック・ホールでの期間限定上演があり、このオフ公演は59E59が開催している「ブリッツ・オフ・ブロードウェイ」という催しへの参加、という経緯のようだから、その間に(フランコムが同道していないところで)劇場の規模や仕様に合わせて演出の変更があった、ということなのだろう。

 作品タイトルは劇中で歌われる楽曲のタイトル「Je ne veux qu’une Nuit」の英語訳。

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